見つめ方や考え込んでいる顔、発する言葉の流れ、声の雰囲気……

――「妻はなぜ、一線を越えたのか?」は原作の副題でもありますが、それを選択する意志がちゃんと描かれていますよね。

篠原 刺激的な部分だけで面白いよ、というわけではなくその裏にある悩みや苦しみ、喜びをきちんと丁寧に描いているので演じている人たちもすごくやりがいがあったと思いますし、私自身もそうでした。

 最初はちょっと過激な描写がある作品だと思って観ていたつもりがだんだん入り込んでうるっときちゃったり、そういう風な感情にもさせられるドラマだと思います。

――岩田さんが演じられた春斗はさくらを救う存在であり、悩ませてしまう立場でもあるかと思います。どんなことを心掛けて役に挑んだのでしょうか。

岩田 春斗は一途にさくらさんを想い続けて、純愛を貫く人物だと考えています。そういった部分を特に終盤、セリフではない部分でどう表現するかは考えましたね。

――そういったニュアンスは、おふたりの共演シーンなどは合わせてみて探っていったのでしょうか。

岩田 そうですね。合わせて探っていく部分もありましたし、並木監督はご自身が撮りたいビジョンを明確に提示してくださる方なので、演出を受ける中で作っていきました。

篠原 岩田さんとは今回ほぼ初めましてで新鮮にやらせていただきましたが、一緒にやることでさくらが生まれてくるんです。岩田さんの見つめ方や考え込んでいる顔、発する言葉の流れ、声の雰囲気……そういったもので私自身も染まっていくところがありました。

――となると、あまり決め込みすぎず現場に臨む、というスタンスなのでしょうか。

篠原 そうですね。最初のテーマは自分で決めるのですが、ガチガチに決めてしまっても意味がないと思うんです。お芝居はやっぱり生ものですし、照明や美術に監督――みんながいて成り立つものだから、そこに行ってみないとわからない。自分のその瞬間の体調も違いますしね。そういうものを全部含めて「味わう」、そして「出す」感覚です。

――篠原さんのそういった感覚は、ご経験の中で自然と培われたものなのでしょうか。

篠原 はい。自分で考えてというよりも、現場に育ててもらうなかでそうなっていった気がします。

――岩田さんは『ろくでなしBLUES』から数えて俳優活動が10年を超えましたが、「演じる」ことに対する変遷などはいかがですか?

岩田 最初は本当に手探り状態で「素人がいきなり失礼します」といった感じで作品に参加していました。だからとにかくいっぱいいっぱいで、たくさん打ちのめされて気づきを得て、ようやくいま立っている感覚です。いつまでたってもめちゃくちゃ自信が生まれるわけでもないし正解もありませんが、お芝居は楽しいのでお話をいただける限りは精一杯自分を出していきたいと思っています。

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篠原涼子(しのはら・りょうこ)

1973年8月13日生まれ。群馬県出身。90年、東京パフォーマンスドールでデビューし、94年「恋しさとせつなさと心強さと」が大ヒット。女優としてはドラマ『anego〜アネゴ〜』『ハケンの品格』『アンフェア』シリーズなどさまざまなヒット作で主演を務める。3月12日には主演映画『ウェディング・ハイ』が公開予定。

岩田剛典(いわた・たかのり)

1989年3月6日生まれ。愛知県出身。俳優・永瀬正敏がカメラマンとして参加した4th写真集『Layer~Evolution from Spin and to the future~』が発売中。3月12日には映画『ウェディング・ハイ』、5月6日には映画『死刑にいたる病』6月17日には『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』が公開予定。

Netflixシリーズ『金魚妻』
2022年2月14日(月)Netflixにて全世界独占配信

多数のサロンの共同経営者として働き、タワーマンションの高層階で誰もが羨む生活を送る平賀さくら(篠原涼子)は、実は夫・卓弥(安藤政信)のDVに苦しむ日々を過ごしていた。夫の浮気相手であり、同じマンションに住むゆり葉(長谷川京子)に挑戦的な態度を取られても、仕事のために耐えていたさくらはある日、ふと立ち寄った金魚屋で店主・春斗(岩田剛典)と出会う。なぜかさくらを懐かしいように見つめる春斗との会話に、癒されていくさくら。卓弥からの暴力が限界となり家を飛び出したさくらは、春斗と一線を超えてしまう。果たしてその愛は裏切りか、運命か――。

原作:「金魚妻」黒澤R(集英社「グランドジャンプめちゃ」連載)
出演:篠原涼子、岩田剛典、安藤政信、長谷川京子 他
監督:並木道子(フジテレビ)/楢木野礼/松山博昭(フジテレビ)
脚本:坪田文/越川美埜子/的場友見
制作プロダクション:フジクリエイティブコーポレーション
製作:Netflix

2022.05.08(日)
文=SYO
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=宮本陽子(篠原)、下川真矢(BERYL・岩田)
スタイリスト=宮澤敬子(WHITNEY・篠原)、桶谷梨乃(W)