いち読者として台本を読んだときのことを忘れないように
――役者としての“作為”をなくしていくということですね。それにはある種、無意識レベルまで役と結びつく必要があると思います。となると台本は結構入念に読み込むタイプですか?
はい、台本はよく読み返します。自分のところだけじゃなくて、成り立ちを入れておきたいとも思っていて。お風呂でよく読みます。
最初はいち読者として読んで、話を大体理解してから今度は役の目線で読むのですが、初見の読者の気持ちを忘れないようにしたいと考えています。そのうえで、役のある種自己中心的な目線で読んでいくとまた違った感覚が生まれるんです。
――本作もそうですが、20代の後半、特に近年は作品ごとに大きな挑戦をされている印象です。ドラマ『#家族募集します』では弾き語り、ベルリン国際映画祭に出品された『ケイコ 目を澄ませて』では聴覚障害を持つプロボクサー役に挑戦。アロマンティック・アセクシャルを題材にとった『恋せぬふたり』が放送中です。
これまでにない大きな挑戦を29歳でたくさんできたことは、奇跡みたいな巡り合わせでした。『#家族募集します』も、これまで音楽劇はやったことがあるけど「地上波で歌うんですか? ギターやったことないですよ」って(笑)。最初は不安もありましたが、いまは30代を迎える準備ができたなと思います。30歳手前で色々なことを飛び越えられたから、30歳も余裕で駆け上がっていける気がします。
『大河への道』(5月20日公開)や『神は見返りを求める』(初夏公開)の他にも、まだ解禁前の作品がいくつかあります。楽しみにしていてください!
岸井ゆきの(きしい・ゆきの)
1992年2月11日生まれ。神奈川県出身。2009年女優デビュー。2017年『おじいちゃん、死んじゃったって。』で映画初主演を務め、第39回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。2019年の主演映画『愛がなんだ』が話題を呼ぶ。最近の出演作にドラマ「#家族募集します」、「恋せぬふたり」、映画『ホムンクルス』など。2022年5月20日には映画『大河への道』が公開予定。
映画『やがて海へと届く』
引っ込み思案で自分をうまく出せない真奈は、自由奔放でミステリアスなすみれと出会い親友になる。しかし、すみれは一人旅に出たまま突然いなくなってしまう。あれから5年――真奈はすみれの不在をいまだ受け入れられず、彼女を亡き者として扱う周囲に反発を感じていた。ある日、真奈はすみれのかつての恋人・遠野から彼女が大切にしていたビデオカメラを受け取る。そこには、真奈とすみれが過ごした時間と、知らなかった彼女の秘密が残されていた……。
真奈はもう一度すみれと向き合うために、彼女が最後に旅した地へと向かう。本当の親友を探す旅の先で、真奈が見つけたものとは。
出演:岸井ゆきの 浜辺美波/杉野遥亮 中崎 敏/鶴田真由 中嶋朋子 新谷ゆづみ/光石 研
監督・脚本:中川龍太郎
アニメーション:久保雄太郎 米谷聡美
配給:ビターズ・エンド
原作:彩瀬まる『やがて海へと届く』(講談社文庫)
©2022 映画「やがて海へと届く」製作委員会
2022年4月1日(金)より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
2022.03.30(水)
文=SYO
撮影=鈴木七絵
ヘア=YUUK
メイク=Yumi Endo
スタイリスト=森上摂子