人生にやさぐれたアラサー女子が出会った不思議な男とのラブストーリー

◆『ラスト・クリスマス』(2019年)

 『ラスト・クリスマス』は甘々すぎない恋愛濃度が心地よいラブストーリーです。主演のケイト役を務めるのは、ダーク・ファンタジードラマの傑作『ゲーム・オブ・スローンズ』で、美しき女王を熱演していたエミリア・クラーク。本作では一転してヒョウ柄のファーコートを羽織り、キャリーバッグをひいて回るヤンキー女を好演しています。

 ゆきずりの男を引っ掛け、友人宅のソファーで靴を履いたまま寝こけるなど、ダメ女ぶりを披露するケイトですが、職場の上司にもなんだかんだ可愛がられる生来の人の良さを併せ持っており、そのキャラクター造形は見事。

 ケイトが荒んでしまった背景には移民問題の影があります。彼女は紛争が繰り広げられた旧ユーゴスラビア連邦出身。舞台であるイギリスも難民を受け入れた国のひとつですが、イギリス国民から差別を受けることも少なくありませんでした。ケイトの母親が、彼女とその姉が生き抜くために期待を寄せすぎたことで、ケイトは荒んでしまったのです。

 そんなケイトの前にトムという名の男が現れ、少しずつ彼女の心を解きほぐしていきます。身の上をはぐらかす彼の正体が明かされるラストは、タイトルの元にもなったWham!の同名楽曲とのリンクが鮮烈に浮かび上がり、そういうことかと膝を打ってしまうでしょう。

◎あらすじ

26歳の女性ケイトは、ロンドンのクリスマスショップで働くかたわら、歌手を目指してオーディションを受ける日々を送っていたが失敗の連続。まさにどん底になりつつあったケイトの前に、ある日心優しき謎の男・トムが現れる……。

ヒュー・ジャックマンら豪華スター共演のおとぎ話版“アベンジャーズ”?

◆『ガーディアンズ 伝説の勇者たち』(2012年)

 最後は、ドリームワークス・アニメーション製作のCGアニメ作品をご紹介。本作は声優が超豪華。主演はクリス・パイン、共演にはジュード・ロウやヒュー・ジャックマンらが名を連ねています。

 雪の妖精であるジャック・フロスト、キリスト教の復活祭で卵を隠す役目を持つとされるイースター・バニーやクリスマスの主役サンタクロース。西洋文化の伝説たちが一堂に会する今作は、いわば“おとぎ話版アベンジャーズ”。

 驚異的なグラフィックと、観客を夢中にさせる疾走感抜群のアクションは夢中になることうけあい。サンタが操るソリが氷の洞窟を猛スピードで駆けてから、勢いそのままに空に飛び立つシーンなどは「うおー行けーっ!」と叫んでしまいたくなるはず。

 また、サンタの口から語られる「希望や夢こそ我々のすべてであり—我々の存在そのものなのだから」というセリフからは、不滅である主人公たちと悪役のブギーマン双方が、“人生から取り除けぬ光と影”であることに気づかされます。クリスマスに本作を観れば希望の尊さを思い出すことでしょう。

◎あらすじ

いたずら好きの雪の妖精ジャック・フロスト。人に姿が見えないことをいいことに、300年以上好き放題をしてきた彼は、ある日サンタクロースに召集をかけられる。そこで告げられたのは、悪の化身であるブギーマンが世界中の子供たちを脅かしている事実だった……。

――クリスマス映画が描くさまざまな幸せの形、いかがでしたか。今年の聖夜は暖かくして、ゆっくり映画でクリスマス気分を味わうのもおススメです。

2021.12.21(火)
文=TND幽介〈A4studio〉