10代最後の作品は「恥ずかしいし、懐かしい」
――クライマックスのシーンも屋上です。「なにこれ! 発狂しそう!」と、初めての感情にスパークする美波が最高でした。その感情がなんなのかは、ぜひ映画館で確認していただくとして。上白石さん自身も「発狂しそう!」という感情になったことはありますか?
今年の4月、adieuとして初めて『ミュージックステーション』に出させていただいたときです。それだけでも発狂なのに、大好きなスピッツの目の前で歌った時は、本当に発狂しそうでした。こんな感情が本当にあるんだなぁと。感情のやり場に困って、その場で足踏みしていました。動くことしかできなくて。
――美波を演じる2年前の自分自身を見て、率直にどう感じますか?
ちょっと若いですし、一つ前の作品のためにすごく体重を増やした名残があるので、より健康的に見えます。10代最後という感じが詰まっているので、恥ずかしいですし、懐かしい気持ちになります。
――この映画は、美波のひと夏の成長を描いています。上白石さん自身は、この2年でどんなところが成長したと思いますか?
自分の仕事に対する責任感や覚悟がより強くなったなとは、ここ最近すごく思うようになりました。歌手活動を本格的に始動させたのも20代になってからですし、最近だとラジオ番組を新たに始めたことで、自分もメディアの一部として、語弊がないように発信したいと思うようになりました。自分の作品も含めて、より良いものを提供したいと思うことが増えた気がします。
――個人的な所感ですが、上白石さんは年々大人の落ち着きを獲得しながらも、少女性が保たれているように見えます。周りから影響は受けても侵略されない芯の強さがあるから、汚れのなさと知性を共存させられる。
頑固な部分はあるんじゃないかなと思います。良くも悪くも。お芝居に関して監督と話している時に、どうしてもこれは譲れないという部分はありますし。歌も含め、好きなことをやらせてもらっているのも、頑固だから好きなことを主張できるのかなと思います。
2021.08.19(木)
文=須永貴子
撮影=鈴木七絵
スタイリスト=道端亜未