台詞も台本に書いてあるだけでは収まらない、足りなくなってくる
――山田さんの演技において、村西なのか山田さんなのか、役とご本人が一体化するように見える瞬間が劇中で何度もありました。特に最終話、ある方と対峙するくだりで、非常に長い台詞を話していますよね。引き込まれました。
海沿いのシーンですよね。あそこ、台本には特に台詞はなかったんです。あの村西が、この状況だったら何を言うか、ということを考えて台詞を言ったんですよ。
――いわゆるアドリブということですよね? 台本には何もなく? 何ページ分もの台詞量に感じました。
はい、めっちゃしゃべってます。台本に書いてあることを、監督だったらどう画で表現しようか、となるけど、どう広げていこうか、という作業は各部署であると思うんです。となると、やっぱり台詞もここ(台本)に書いてあるだけでは収まらない、足りなくなってくるんですよね。
あのシーンで、何をしゃべるかを考えたときに、あのときの村西はホームレスをやっていたから、ちょっと久々のしゃべりで勘が鈍っているのを出したくて、わざと噛んだりもしました。
いつもの村西みたいに全部ばっちばちにキメていくんじゃなくて、ちょっと人間らしさが見えたから、僕っぽさを少し感じたというのもあるんだと思います。
――そうだったんですね。空白の部分を山田さんが考えてしゃべられる……けど、様々な角度から何回も撮りますよね。同じことを何回も言うことも、大丈夫なんですか?
それは、大体で言ってます(笑)。『シーズン1』のときからやっているんですけど、「ここは、こういう台詞を入れといたほうがいいな」と思って、家で考えて練習してやるときもあるんですけど、段取りをやってみて、「やっぱりこれはもっとこうだな」と思って変えるときもあったりします。
その後、テストとなったら、ひとりで隅で練習して、「さっき段取りではこう言ったんですけど、こういう言い方に変えますね」みたいに言うようなことを何回もやっているんです。「どうしてもこういうのが必要、というのがあったら言ってください」と記録さんに言っていますけど、大変そうですよ。本当にみんなで作っていってる感じです。
2021.06.22(火)
文=赤山恭子
撮影=佐藤 亘
スタイリスト=五月桃(ROOSTER)
ヘアメイク=灯(ROOSTER)