「意外と大人なんだね」とよく言われるという、28歳。
7年前に俳優デビューを果たし、個性的な役を次々と自分のものにしてきた。
端正な顔の下で燃やす、芝居への強烈な愛とは――。
CREA WEBでは、CREA2021年夏号に掲載中のインタビューの一部を大公開します!
演じることに、取り憑かれている
もしも街中で磯村勇斗さんを見かけたら、どうか温かな目で見守ってほしい。なぜなら彼はその瞬間、人知れず演じることに熱中しているかもしれないから。
「表参道とか、人混みの中を歩くときにはふと思い立って、自分とは正反対の性格の人を演じてみたりします。コミュニケーションを取るのは苦手だけど、買い物はしたい……みたいな。普段から遊び感覚でやっているんですが、おもしろいです。
例えば歩くのがすごく遅い人になってみると、普段何気なく見ている景色がゆっくり流れるから新しいお店を見つけられたり、『ここの床ってこんなタイルだったんだ』と発見があったりするんです。熱中しすぎると変な人に思われるので気をつけたほうがいいですけど(笑)」
CREAの撮影でも、しっとりとアンニュイな視線を向けたかと思えば、突然無邪気にコミカルな動きをしてみたり、クールな表情でポージングを決めたり。まるでカメラの前で様々な役を演じ分けているよう。本人は「モデルの神様が降りてきたんですよ」と冗談めかして笑ったが、底なしの表現力の片鱗が見えた気がした。
「結局、自分を守っているんでしょうね。それはみなさんも経験があると思うんです。上司の前で猫をかぶってみたり、友達の前でお金がある風に見せたり。演技という鎧に包まれていると、少し生きやすくなる気がします」
2021.06.20(日)
Text=Kozue Matsuyama
Photographs=Tomoki Kuwajima
Styling=Ryosuke Saito
Hair & Make-up=Tomokatsu Sato