“男役”としてのスイッチが入った瞬間を目撃「嬉しくもあり、寂しくもある」

――仲良くなってからは、お互いの印象は変わりましたか?

美弥 変わらないよね。だけど最初、かいちゃんはすごく柔らかくて、ほわ〜んとしていて。今の七海ひろきから想像もつかない癒しのオーラを出していたんですよ!

七海 自分で言うのも何だけど、よく(宝塚に)入れたなって思う。入団した時は今よりもさらに“ホワホワホワホワ〜”みたいな感じだったよね。

美弥 でも、研6か7ぐらいに、彼女にはスイッチが入ったんです! 私、そのスイッチが入った瞬間を、今でも覚えてる。劇団の入り口の廊下で、かいちゃんとすれ違った時。同期とすれ違うと嬉しいし、組が違うとなかなか会えないから「イェーイ」って感じになるんですけど、その時に「あっ、今までのかいちゃんじゃない!!」って思ったの。たぶんかいちゃんは覚えてないだろうけど。

七海 うそー!? 全然覚えてない!

美弥 「かいちゃんが、私の知らないかいちゃんになってしまった……」って、その時ちょっと寂しかったんだよね。男役としての『七海ひろき』というブランドみたいなものが確立した瞬間を見たんです! 今でもはっきり覚えてる。かいちゃんはあの時にきっと、『こんな男役でいたい』っていう意志みたいなものが、はっきり出た頃だったのかな、と私は勝手に思っていて、同期としてはそういうのってすごく素敵だなと思いました。

七海 私は受験時代からずっと、美弥ちゃんのダンスがすごく好きだったんですよ。当初から同期たちに、「私はまいちゃん(美弥さん)のダンスの完全なるファンだから!」って公言していて。組が離れても、観に行くと絶対に美弥ちゃんをずっとガン見していました。それで何が一番好きだったかって言うと、パレードで並ぶ時に、こう、ポワントみたいなの(バレエの立ち方)があるじゃないですか。あの足が、何年経ってもすっごく綺麗に開いていて……。

美弥 やだ、やめて〜! 

七海 美弥ちゃんは足の先まで美しくて、私は毎回パレードでそれを見るのが好きでした。「今日も綺麗だわ〜」と思って見てたよ。

美弥 そんなこと初めて言われた(笑)。

七海 超細かいところまで、ファン目線で見ていたんだと思う。でもある時、「美弥ちゃんの良いところを自分にも取り入れたい」って思って見るようになった瞬間が、そういえばあったなぁって思い出しました。同期のいいところを自分も吸収したいなって思う時期が。そんな風に思うようになったのが、確かに研7とか新人公演の終わり頃なのかもしれない。

美弥 私が感じた“七海ひろきが進化した時”ですよ! あの時の寂しさは忘れない。遠い人になっちゃた……みたいな。

七海 でも私も、美弥ちゃんが遠い人になった〜って思った瞬間、あったよ。マーキューシオ(『ロミオ&ジュリエット』)を演った時。お互いに、下積み時代が長かったじゃない? だから組替えして、美弥ちゃんがマーキューシオを演っているのを観た時に、何と言うか『魂と今の自分の全力をぶつけている』というのをすごく感じて、それがとっても自分にも励みになったし、素晴らしいと思ったのをすごく覚えてる。

美弥 私たちって基本的にお互いに大絶賛なんですよ。かいちゃんを観に行くと「きゃー!カッコいいー!」って感じだし、ウインクなんてもらったら本当にドキドキしてたから。私、こういう関係がとっても好きでしたね。

七海 そう! 私、美弥ちゃんの『カンパニー -努力、情熱、そして仲間たち-』と『BADDY -悪党は月からやって来る-』が好きすぎて! 美弥ちゃんが宝塚人生でいろんな男役をやってきて、ほぼ観ている中で、『カンパニー』の“高野 悠”役が実は一番好きなの。

美弥 えー初めて聞いた(笑)。でも、かいちゃんがとにかくあの公演をすごい気に入ってくれてたのは覚えてる。

七海 で、『BADDY〜』も好き。お芝居との抜け感もすごい好きだったんですよ。そのギャップがね、バランスが素晴らしくて。……って、ただのファントークですね。

2021.06.17(木)
Text=Kyoko Murahana
Photographs=Takeshi Takagi(SIGNO)
Hair & make-up=Tomoko Okada(TRON)〈Rurika Miya〉、Ikuko Shindo(TRON) 〈Hiroki Nanami〉
Styling=Yumeno Ogawa