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 しなやかに時流を乗りこなし、表現の幅を広げるアーティスト・美弥るりかさん。

 ひとつの物や事に囚われず、個と個の横のつながりが重視される「風の時代」を契機に、感じたこと、変わってきたこと——。

 改めて自ら見つめ直す、美弥るりか“らしさ”とは?


「私にとって、最近すごく大きな発見がありました」

――宝塚歌劇団退団から約2年が経ちますね。2020年の末から「風の時代」に切り替わり、さらにコロナ禍によって生活や価値観も大きく変化した今、美弥さん自身は何か変化を感じることはありますか?

 いま改めて自分をいろんな視点から見つめ直す作業をしている最中。私自身、何か今ものすごく変わったことがあるかといえば、他人から見ると何も変わっていないかもしれません。

 だけどきっと、自分の中では少しずつ変わってきているのかもしれないと思うことがあります。

 たとえば、「利己的な愛」と「利他的な愛」。いまのこの「風の時代」において言われていることですが、「利他的であるべき」というのがありますよね。

 それを考えた時に、これまでの人生、自分はいつも「利他的」だったなあ、と。

――それは「風の時代」にぴったりだったのでは?

 いえいえ。まずは「利己的な愛」がないと利他的にはなれない、ということに気づいたんです。自分で自分を愛し、自分のことを知ることによって、自分の愛の、何かタンクのようなものがいっぱいになる。

 そうして初めて、皆さんのために愛情を注いだり、人のために何かをしたりするエネルギーになるのではないかと思うんです、最近。

 そこの気づきが一番、自分のなかで変化したところかもしれません。

――自分を愛するために、改めてご自身を見つめ直して気づいたことは?

 これまでを振り返ると、自分よりも他人のことを優先してしまっていた自分がいて。じゃあ自分が本当はどんなことが好きで、どんなことを求めているのか? ということに、今まで目を向けていなかった。

 「自分の人生なのに、自分自身のことを私はよく知らない」と気づいたんです。

 今までは常に舞台上に役があって、その役になって違う人生を生きることで、満たされていたのかもしれません。

 でも今は、舞台と舞台の間に少し時間があって、“自分”として生きる時に、そこがすごく空っぽな気がして……。

 それで、「自分で自分を喜ばせることができていなかった」ということが、私にとってすごく大きな発見だったんです。

2021.06.17(木)
Text=Kyoko Murahana
Photographs=Takeshi Takagi(SIGNO)
Hair & make-up=Tomoko Okada(TRON)
Styling=Yumeno Ogawa