素直に歌が好きな気持ちからミュージカルの道へ

――そして、いよいよ11年に上演された初めてのミュージカル『ロミオ&ジュリエット』でティボルト役を演じることになりますが、どんな経緯だったんですか?

 ミュージカルのオーディションは以前にも受けたことはあったんですが、ミュージカルを僕自身があまり分かっていなかったんです。僕が歌うことが好きなのを知って、マネージャーさんがいろいろアドバイスしてくれたんです。ミュージカルの歌い方とJポップの歌い方とか、いろいろな歌い方にチャレンジして、ここでもどこかでフッ切れたんです。合格を聞いた瞬間から一気に不安に陥りましたけどね(笑)。

――それまで出演されていたドラマなどの映像と舞台の違いは何でしょうか?

 単純に稽古期間が違うし、舞台は目の前でお客さんの感情がダイレクトに伝わってくる。

 いろんな方との距離も違いますよね。お客さんとも実際に同じ空間で同じ空気を吸って、同じ時間を共有する。そして、決して安くない入場料を出して見に来てくださっているんだということを、身を持って感じることが多かった。それに入り待ち、出待ちをされるお客さんもいらっしゃるわけで、そのときどきで僕に対する意見が聞こえてくる。それで、舞台にどう立てばいいのか、僕の思っていることをどう伝えればいいのか、ということを考えるようになりましたね。

――これまで『エリザベート』『シラノ』と3作のミュージカルに出演されてきましたが、苦手に感じていた演技についての考え方は変わってきましたか?

 ミュージカルの稽古をとおして、初めてお芝居の勉強をする場を持てたので、安心感みたいなものはあります。自信は今もないですけど、やっぱり稽古で培われていっているような気がします。役が変わればゼロからのスタートだと思っていますが、最初は一つの仕事が終わったときにリセットボタンを押すのも怖かったんです。でも、キャストのみなさんと稽古場で一緒にやってきたんだ、という経験は、舞台上での自信に繋がりますよね。

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2013.05.03(金)
text:Hibiki Kurei
photographs:Tadashi Hosoda