「僕はコントをやってるときが、いちばん楽しい」(後藤)
――昨年は新たなYouTubeチャンネル「ジャルジャルアイランド」開設のほか、老舗旅館やビル1棟を使ってのオンラインコントやリモートコントなど、新しいコントの見せ方を広げていました。そういう試行を見ている中で感じたのは、コントに出てくる登場人物のキャラクターが人気となっているんだなということ。個人的な意見ですが、コントタイトルはいずれも「~奴」と人に特化しながら、舞台で観るジャルジャルさんのコントはその世界観を形成する物語性みたいなところに面白みを感じていたので、キャラクターに注目が集まっていることを少し意外に感じてしまいました。
福徳 その気持ちはわかります。デビュー当時はキャラコントなんてもってのほか、なんなら嫌だなという気持ちでした。初めて南くん(後藤が扮する高校時代に実在した同級生)をやって、思いのほか反応がよかったときも、ただ友達をピックアップしただけやからって強がってたところがありましたからね。
けど、経験を積んでみると、案外キャラコントも面白いなと思うようになった。まぁ、僕らの場合、単に変な奴をやってないというか、おもしろ設定がベースについてるからというのもあるんでしょうけど。
後藤 たしかに、このキャラがこんなに立体的になってくるんやっていうのは自分らとしても意外でしたね。例えば、神保マオ(福徳扮するハズレの先生)が2時間超えの生配信をやるまでになったんか、という新しい発見もありましたし。
福徳 その辺は嬉しい誤算でありながら、(何度も出演させることで)永遠に生きるキャラクターのはずやったのに最終回を迎えてしまう誤算でもあるんです。南くんも、食べるときだけ滑舌がよくなるという特徴を1回つけてしまったことが無駄にへばりついてしまって。
後藤 で、「あれ、なんで食べてんのに滑舌悪いん?」みたいなコメントが流れてきたりして、設定を加えていたことに気づくんです。
福徳 僕らは比較的普通な感じの人間なんで、キャラに入ることで助かってるところはあるのかなと思います。例えば、「ツッコミ下手な関東人」も、昔やったら今のようにカツラとかメガネも装着してなかったと思うんです。けど、ネタを量産すればするほど装着したほうがおもろくなる。
全部同じ見た目のネタ8,000本より、いろんな見た目の8,000本があったほうが面白くなることにも気づいたので、装着物も増えていくようになったんやと思います。
後藤 仮に仮装してなかったとしても、キャラに入ると不思議なもんで画面映えしたりするところもありますしね。
――とはいえ、意図的にキャラコントを作っているわけでもないと。
後藤 そうです。キャラクター系は使い勝手がいいっていうくらいの認識ですね。
――昨年、念願だった『キングオブコント』で優勝を果たしました。それ以降、コントへの向き合い方や気持ちに変化はありましたか?
後藤 向き合い方は変わらないですけど、劇場出番では内面としてチャンピオンですって思っとかなあかんなと。優勝したからこそ、寄席ではしっかりと笑いを取っていかなあかんなとは思ってます。
福徳 僕も向き合い方に変わりはないですね。ただ、責任感はやっぱり持たんとなって。おったな、あのチャンピオンって思われへんように頑張らなあかんなっていう気持ちはあります。
まぁ、面白いかどうかは人それぞれなんで、自分たちのペースっていうわけでもなく、変わらずにコントを作り続けていくだけです。これは決意というわけではない。格別に人を笑わせたいという願望もないですし、面白いことをやりたいっていう感じでもない。ただ(これからもコントを)楽しめたらいいなというだけです。
後藤 僕はコントをやってるときが、いちばん楽しいですけどね。人に誇れる趣味はないんですけど、コントがいちばんのストレス解消法やからこそ、趣味を持つ必要性もないんかなと思います。
2021.04.29(木)
文=高本亜紀
撮影=松本輝一