冴えないやつが主人公になったりヒーローになったりするのが良い

――今回のインタビューの中で影響を受けた演劇や映画を教えていただきましたが、学生時代は漫画家も目指されていたと聞きました。

 藤子・F・不二雄先生の作品に影響を受けましたね。「ドラえもん」「パーマン」「キテレツ大百科」……短編集や大長編も読み漁っていました。

 中でも「パーマン」が好きですね。冴えないやつが主人公になったりヒーローになったりするのが、良いんですよね。

――“冴えない人物への優しさ”は、松居監督の作風にも通じるところがありますね。逆に、最近観て面白かったコンテンツはありますか?

 相米慎二監督の特集上映に通って、制覇しました。全部観たうえで、改めて『東京上空いらっしゃいませ』(90)が好きだなと思いましたね。牧瀬里穂さん演じるアイドルが事故で亡くなってしまったんだけど現世に舞い戻ってきて、死ぬ前よりもいきいきとふざける姿が、明るくて切なくて好きなんです。

――まさに『くれなずめ』ですね!

 そうなんですよ。作っているときは忘れていたけど、今回改めて観て、そう感じました。制作中に観ていたら、影響を受けちゃっていたでしょうね。

――松居監督ご自身の直近の活動についてもお聞きしたいのですが、YouTube(ゴジゲンのゴジtube)を始められましたね!

 YouTubeが流行っている理由があまりわからなくて、モーニングルーティンや「作ってみた」「歌ってみた」系をいろいろ見てはみたんですけど……このままだと感性が置いていかれるな、ここに蓋をして無かったことにしたらマズいなと思い、向き合うことにしたんです。

 試してみたらすごく面白くて、ここで戦える気はしないけど腰まで浸かってみようという感覚です。Clubhouseにはまだいけていないので、焦っています(笑)。

――昨年は、小説『またね家族』も発売されました。第2弾も大いに気になるところです。

 実は5万字くらい恋愛小説を書いたのですが、途中で書けなくなって。恋愛って難しいですね。どこに行ったらいいかわからなくなっちゃって……(苦笑)。映画や舞台に比べて、小説は一番ルール無用で宇宙にだって行けるし10年後も20年前も描ける。そのぶん、大変さはありますね。今回はプロットとかもなくいきなり始めてしまったので、組み立て直したらいけるかもしれません。

松居大悟(まつい・だいご)

1985年11月2日生まれ、福岡県出身。劇団ゴジゲン主宰。2012年に長篇初監督作 『アフロ田中』が公開。映画『アズミ・ハルコは行方不明』『アイスと雨音』『君が君で君だ』、ドラマ「バイプレイヤーズ」シリーズなど話題作を多く手掛ける。J-WAVE「JUMP OVER」(水曜・26時~)ではナビゲーターを担当。監督を務めた映画『バイプレイヤーズ〜もしも100人の名脇役が映画を作ったら〜』が現在公開中。初めての小説に『またね家族』(講談社)がある。

映画『くれなずめ』

高校時代の帰宅部仲間6人が、友人の結婚式に参加するため、5年ぶりに集まった。優柔不断だが心優しい吉尾(成田 凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、会社員で後輩気質の大成(藤原季節)、唯一地元に残ってネジ工場で働くネジ(目次立樹)。披露宴の余興で、赤フンダンスを披露するが、だだすべりで終わってしまう。二次会までの3時間、だらだらと過ごす中で、蘇る過去の思い出とともに、目を背けていた“友の死”と向き合うことになって――。

監督・脚本:松居大悟 
出演:成田凌、高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹、前田敦子
2021年4月29日(木・祝)よりテアトル新宿他にて全国ロードショー
https://kurenazume.com/

2021.04.15(木)
文=SYO
撮影=榎本麻美