本当に終わっていく『エヴァンゲリオン』

 25年続いた『エヴァンゲリオン』シリーズが、2021年3月8日に劇場公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』をもって完結した。「ついに終わった」なのか「終わってしまった」なのかは、私たち観客それぞれによって異なるだろう。

 劇場のスクリーンに映し出される「終劇」の文字、あるいはシリーズの歴史を感じさせる長大なエンドロールを眺めながら、各々が胸の内で自分なりの“卒業”をかみしめる――。人によって受け止め方が異なる部分に、「人類補完計画」が成し遂げられなかった世界=現実を感じさせられ、これまた感慨深い。

 3月29日に発表された『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』(以下、『シン・エヴァ』)の興行収入は、公開初日から21日間累計で60億7,821万1,750円、観客動員数は396万1,480人。これまでに3作品が制作された“新劇場版”のそれぞれの成績は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が20億円、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』が40億円、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』は52.6億円となっており、『シン・エヴァ』は現時点でシリーズ最大のヒット作となった。

 ちなみに興行通信社による日本国内の歴代興収ランキング(3月28日付)を参照すると、99位が『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』(10)の68.6億円。4月5日週には、歴代トップ100位以内にランクインしそうだ。

 また、3月22日には総監督の庵野秀明に4年にわたって密着したドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀「庵野秀明スペシャル」』(NHK)が放送され、大いに話題を集めた。

 真に面白いと思えるものを生み出すために苦悩し続ける庵野やスタッフの生々しい姿が映し出されており、スタジオジブリの宮崎駿監督や鈴木敏夫プロデューサー、庵野の妻である安野モヨコも出演。

 『シン・エヴァ』の制作風景はもちろん、アフレコの模様も描かれ、ファンにとっては必見の内容であった。本番組を観た後でもう一度『シン・エヴァ』を観ると、よりエモーショナルなものとして受け取ることができるのではないか。

 3月28日には、『エヴァンゲリオン』シリーズとしては約24年ぶりとなるキャスト登壇の舞台挨拶を開催(新宿バルト9にて)。こちらの模様は全国334劇場で同時生中継され、各キャストたちがシリーズとの歩みを振り返った。

 上映自体はまだまだ続いていくが、これらのイベントによっていよいよ幕引きの雰囲気が濃くなってきた、現実味を帯びてきたといえるかもしれない。『エヴァンゲリオン』という歴史的シリーズは、やはり本当に終わっていくのだ。「さようなら、全てのエヴァンゲリオン。」のセリフが、日を追うごとにより重みを増している。

2021.04.04(日)
文=SYO(協力:桜見諒一)