“新劇場版”はすっきりとしたストーリーラインに
『エヴァンゲリオン』が、終わるということ。あくまで個人的な感覚ではあるが、『シン・エヴァ』を観賞し、最も心を揺さぶられたのも、その部分。つまり「ああ、本当にちゃんと終わるんだ」ということだ。
ある種、「難解さ」が特徴でもあった本シリーズが、「父子の対話と理解」というシリーズを貫くテーマにきっちりと向かい、それぞれのキャラクターたちの心の救済をきちんと描いたうえで、見事に帰結したということ。「what if? (もし~だったら)」的な側面はありつつも、この点において涙を禁じ得なかった。
TVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』と続く“旧劇場版”に比べ、『シン・エヴァ』を含む“新劇場版”はよりすっきりとしたストーリーラインになっており、碇シンジ、綾波レイ、惣流・アスカ・ラングレー改め式波・アスカ・ラングレーといったキャラクターたちの掘り下げが、時間をかけて丁寧に行われる。
そして、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の衝撃的なラストに続いて『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』で「14年後」が描かれ、これまでの物語とは完全に分岐し、その果てに描かれた『シン・エヴァ』で堂々たるフィナーレを迎えたわけだ。
たとえばTVアニメ終盤から“旧劇場版”前半までは不憫な状態に陥ってしまう悲劇のキャラだったアスカは、心を許せる存在に出会う。レイの“そっくりさん”(アヤナミレイ[仮称])は、何てことのない日常を過ごすなかで、自分だけの感情と幸せを得る。
葛城ミサトは母となり、未来に希望を託して戦う(“旧劇場版”ではシンジを送り出すのが「大人のキス」だったのが、『シン・エヴァ』ではハグに変わっている点が熱い)。そしてシンジは、父である碇ゲンドウと真正面から向き合い、互いに想いをぶつけ合う。
こうしたドラマティックな展開が各キャラクターに用意されており、151分を駆け抜けていく(上映時には、『これまでのヱヴァンゲリヲン新劇場版』3分41秒に続き、『シン・エヴァ』本編151分が流れる)。
TVアニメ版や“旧劇場版”では性的な描写(ストーリー含む)が顕著かつ直接的だったのが、ほぼ感じられないのも“新劇場版”の特徴だ。多感な時期を過ごす14歳の少年少女や、トラウマから抜け出せない大人たちの逃避行為、あるいは欲望の表れとして表現されることが多かった印象だが、“新劇場版”ではよりピュアでクリーンなテイストに変貌を遂げている。そうした下地があってこそ、『シン・エヴァ』の晴れやかなラストシーンにつながった、という向きもあろう。
とはいえ、TVアニメや“旧劇場版”、“新劇場版”のどれが最も優れている、ということではなく、それぞれに違った良さがあるのが、『エヴァンゲリオン』の凄さだ。このシリーズが後世に与えた影響はすさまじく、現在のヒットコンテンツの中にも、『エヴァンゲリオン』に感化された作品が多数存在する。
2021.04.04(日)
文=SYO(協力:桜見諒一)