「GEJO」で鮨を握るのは新進気鋭の料理人
およそ鮨店らしくない「GEJO」という横文字の店名。実はこれ、オーナーシェフの名字なのだ。ここで腕を振るっているのは34歳の下條貴大(げじょうたかひろ)さん。フランス、イタリア、スペイン、ブルガリアなどを巡り、腕を磨いてきた。鮨店の店主としては異色の経歴だ。
故郷の富山に戻ってからは、同じ東岩瀬町のフランス料理「カーヴユノキ」や、新根塚町の鮨店「鮨人」などで研鑽を重ね、東岩瀬町で独立。店を構えた古民家は、刻まれた家紋が下條家と同じ、という不思議なご縁で導かれたという。2021年1月に1周年を迎えたばかりながら、既にリピートするファンも多い。
下條さんのお料理は、地元富山の食材を使って海外で出会った美味しいものを表現している。握りに至るまでの序章も楽しい。おつまみ7品(7切れ)に始まり、昆布で締めて炙った真鯛や、パクチーオイルを使ったブリのリエット、和え物、茶碗蒸しなどだ。食用花を飾ったり、スモークしたり、薪のおき火という手法を使ったり、イカを使った味噌汁には、明治28年創業の「石黒種麹店」のこだわりの蔵出し味噌を使っていたり。
かなりの品数をいただいてから、握り10貫と手巻き鮨となる。とはいえ、シャリの量が控えめなことと、何より鮮度のいい地元富山のネタと下條シェフならではの発想のお鮨が美味しいので、するりと胃袋に納まってしまう。
飲み物のペアリングは、地元の東岩瀬「満寿泉」のラインナップの中から厳選した銘酒や、ブルゴーニュやピエモンテ、富山「セイズファーム」のワインなど。ゲストの好みでアレンジしつつ、お料理にぴったりなものを合わせてくれる。
器のほとんどが同じ通りにギャラリーを構え、納品は2年待ちという釋永岳さんの作品。甘味に添えられた鉄製の楊子も、同じ東岩瀬町に工房をもち、海外での受賞歴もある「IRON CHOP(アイアンチョップ)」澤田健勝さんのもの(次回でご紹介)。富山のよさを世界に発信したいというGEJOワールドのお料理を支えている。
GEJO(ゲジョウ)
所在地 富山県富山市東岩瀬町180
電話番号 076-471-8522
https://gejo.jp/
2021.02.17(水)
文・撮影=たかせ藍沙