人里離れた秘境に佇む世界レベルの美食「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」


2020年1月、富山市にある川辺のホテル「リバーリトリート雅樂倶」内の一ツ星フレンチレストラン「レヴォ」の谷口英司シェフが、惜しまれながらホテルを去った。
それから11か月後の12月22日。谷口シェフは、自らの理想を現実のものとしたオーベルジュ「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」をオープンさせた。最寄り駅2駅からは車で約40分〜1時間。南砺市利賀村の人里離れた山の中の立地でありながら、オープン初日にはテレビ局が3社も撮影に来ていて、注目度の高さがうかがえる。

ここで供されるのは、富山の食材にとことんこだわった地産地消の食材を使った前衛的地方料理。このような山の中で、日本でもトップクラスの料理をいただけることは驚きに値する。レストランで食事するだけでもいいし、夕食の余韻とともに宿泊することもできる。
大阪生まれの谷口シェフは、フランスの三ツ星レストランをはじめ、東京や大阪の高級レストランで研鑽を重ねた。実は、最初に富山に来たきっかけは不本意な異動だったという。富山での生活を重ね、地元の食材の素晴らしさに気づいた時、彼の料理が変わった。
この場所を選んだ理由を谷口シェフは、「誰にも文句を言われずに、好き放題したかったから」という。レストランがあるメイン棟の下にはワインセラーと肉の熟成庫、他に宿泊コテージが3棟、サウナ棟、パンを焼くためだけのパン小屋、そして、土からこだわった自家菜園もある。7,500平方メートルの敷地では、未知の山の幸を収穫できることも。この秘境の山は宝物にあふれているのだ。
夕食は、食事のみのゲストは18:00から、宿泊ゲストは19:00から始まる。ランチ、ディナーとも同じメニューで、コースは全12品の1種類のみ。

右:月の輪熊の赤身スライスには、熊のジュレとウニ、山菜のゼンマイとスス竹。さっぱりとした赤身にウニとジュレが濃厚さをプラスして絶妙に調和している。



コースの最初は、プレゼンテーションも美しいアミューズから。熊や深海魚のゲンゲ、香箱ガニと、富山ならではの食材がズラリ!
前店からのスペシャリテ、ヤギのチーズとオリーブオイルにふきのとうのオイルで香りを添えた「大門素麺」や、「L'évo鶏」も健在だ。スペースの都合上、すべての料理はご紹介できないのが残念!
前衛的地方料理とのマリアージュは、富山の「セイズファーム」のワイン、「満寿泉」の日本酒など。「レヴォ」のためだけに創られたオリジナルのお酒もある。



使われている器やカトラリーは、そのほとんどが地元富山の作家の手によって「レヴォ」のためだけに創られたものばかり。家具もクロスもすべてがオリジナルだ。なかには、工事の際に排出された土で創った器もある。
ここでは、富山愛に溢れた世界レベルの味を楽しむことができるのだ。
2021.02.05(金)
文・撮影=たかせ藍沙