人里離れた秘境に佇む世界レベルの美食「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」
![オープンキッチンのレストランは26席。カウンター4席、ホール3卓、個室2室となっている。大きな窓からの眺めも素晴らしい。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/1/c/-/img_1c7b163fbc49d54dc1a073ce17ecc673101067.jpg)
![5種類の美しいアミューズ。手前から時計回りに、L'évo鶏レバーペーストを挟んだビーツのマカロン、香箱ガニが入った細長い八尾もなか、ヤギのチーズのグジェール、熊の手のタルト菊芋チップ載せ、山椒の殻をまぶした深海魚のゲンゲ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/3/-/img_53b1df24bde263c4fa4cd13852609d68185019.jpg)
2020年1月、富山市にある川辺のホテル「リバーリトリート雅樂倶」内の一ツ星フレンチレストラン「レヴォ」の谷口英司シェフが、惜しまれながらホテルを去った。
それから11か月後の12月22日。谷口シェフは、自らの理想を現実のものとしたオーベルジュ「キュイジーヌ・レジョナル・レヴォ」をオープンさせた。最寄り駅2駅からは車で約40分〜1時間。南砺市利賀村の人里離れた山の中の立地でありながら、オープン初日にはテレビ局が3社も撮影に来ていて、注目度の高さがうかがえる。
![オープンキッチンなので、メインホールからは調理する谷口シェフの姿が見える。窓の外の景色を眺めるならテーブル席がいいけれど、調理中のシェフの手元まで眺めたいならカウンター席がお勧めだ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/6/e/-/img_6e17430846b7b6b801b632f431f45c03115829.jpg)
ここで供されるのは、富山の食材にとことんこだわった地産地消の食材を使った前衛的地方料理。このような山の中で、日本でもトップクラスの料理をいただけることは驚きに値する。レストランで食事するだけでもいいし、夕食の余韻とともに宿泊することもできる。
大阪生まれの谷口シェフは、フランスの三ツ星レストランをはじめ、東京や大阪の高級レストランで研鑽を重ねた。実は、最初に富山に来たきっかけは不本意な異動だったという。富山での生活を重ね、地元の食材の素晴らしさに気づいた時、彼の料理が変わった。
この場所を選んだ理由を谷口シェフは、「誰にも文句を言われずに、好き放題したかったから」という。レストランがあるメイン棟の下にはワインセラーと肉の熟成庫、他に宿泊コテージが3棟、サウナ棟、パンを焼くためだけのパン小屋、そして、土からこだわった自家菜園もある。7,500平方メートルの敷地では、未知の山の幸を収穫できることも。この秘境の山は宝物にあふれているのだ。
夕食は、食事のみのゲストは18:00から、宿泊ゲストは19:00から始まる。ランチ、ディナーとも同じメニューで、コースは全12品の1種類のみ。
![左:花で飾られた寒ブリと紅大根のマリネには、自家製のチョウザメキャビアがほどよい塩味を加えている。
右:月の輪熊の赤身スライスには、熊のジュレとウニ、山菜のゼンマイとスス竹。さっぱりとした赤身にウニとジュレが濃厚さをプラスして絶妙に調和している。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/7/9/-/img_79abc6e59f415cbf97b4c573cc4f1f98539934.jpg)
右:月の輪熊の赤身スライスには、熊のジュレとウニ、山菜のゼンマイとスス竹。さっぱりとした赤身にウニとジュレが濃厚さをプラスして絶妙に調和している。
![利賀村のみつ子おばあちゃんが育てた赤かぶは、腐葉土を使った包み焼きに。ゆっくりと蒸し焼きにされることで、赤かぶの旨みと甘みが最大限に引き出されている。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/0/5/-/img_051f522ba1ba3b025e0680bc23fbf429145727.jpg)
![L'évo鶏。ベースとなる鶏は、満寿泉の酒粕などを飼料に使って、谷口シェフが生産者さんとともに開発したもの。中に熊の内蔵で炊いたご飯を詰めて焼いている。鶏と熊がお互いを引き立てている。器は、東岩瀬を拠点とする釋永岳さんが、「レヴォ」の敷地内の土を練り込んで焼きあげたオリジナルだ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/b/-/img_5b7ff3b8aaa44c1332d320fd7ea64dae234197.jpg)
![真鱈は、イカ墨を使った富山の塩辛「イカの黒づくり」を塗って熟成させて熾火で焼く。添えられているのはカリフラワーのソース。右側に置かれているのは敷地内に生育しているクロモジの枝。ほのかな香りを楽しみながら真鱈をいただくのだ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/-/img_bd338a86fc0b6629c10feb1fa0410ebb300154.jpg)
コースの最初は、プレゼンテーションも美しいアミューズから。熊や深海魚のゲンゲ、香箱ガニと、富山ならではの食材がズラリ!
前店からのスペシャリテ、ヤギのチーズとオリーブオイルにふきのとうのオイルで香りを添えた「大門素麺」や、「L'évo鶏」も健在だ。スペースの都合上、すべての料理はご紹介できないのが残念!
前衛的地方料理とのマリアージュは、富山の「セイズファーム」のワイン、「満寿泉」の日本酒など。「レヴォ」のためだけに創られたオリジナルのお酒もある。
![猪のクラシタ(肩ロース)。添えられているのは、ほうれん草、寒干し大根、つぶつぶのかわいい形をしたチョロギ。絶妙な火入れは谷口シェフの真骨頂だ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/5/f/-/img_5f101891cb4abf8bc8bf8eed575f6f71188647.jpg)
![高村刃物製作所のナイフ。地元利賀村の木を組み合わせ、隙間に自然の色を表現した樹脂を流し込んで成型したもの。肉に吸い込まれる切れ味と、細部へのこだわりが料理の味を引き立ててくれる。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/d/7/-/img_d7f26aee3de44e9d78e48eea56b26ed2111732.jpg)
![デザートの後のプチフールは5種類。フィナンシェ、洋梨とレモングラスのパート・ド・フリュイ、ブールドネージュ、富山棒茶を使ったタルトレット、生キャラメル。キャラメルに刺さっているのはクロモジの小枝だ。](https://crea.ismcdn.jp/mwimgs/c/9/-/img_c97ec1f9548550cdaf82d997ee6007b381405.jpg)
使われている器やカトラリーは、そのほとんどが地元富山の作家の手によって「レヴォ」のためだけに創られたものばかり。家具もクロスもすべてがオリジナルだ。なかには、工事の際に排出された土で創った器もある。
ここでは、富山愛に溢れた世界レベルの味を楽しむことができるのだ。
2021.02.05(金)
文・撮影=たかせ藍沙