製薬会社が手がけるビューティ&ウェルネス・ヴィレッジ「ヘルジアン・ウッド」
「越中富山の薬売り」という言葉を聞いたことがあるだろうか。富山では、室町時代の16世紀中頃に薬を扱う商人が現れ、江戸時代に入ると製薬も始まり薬産業が発展していく。各家庭に薬を常備して使った分だけ支払う「置き薬」という販売方法も富山が発祥だ。
2020年3月、そのような歴史を持つ富山で、地元の製薬会社「前田薬品工業」が美容と健康をテーマにした「ヘルジアン・ウッド」をオープンさせた。場所は立山連峰を望む富山県立山町、富山駅から東へ車で約30分ほどの田園地帯。デザインは、日本を代表する建築家・隈研吾氏だ。
東京ドーム2個分、約10ヘクタールという広大な敷地に予定されている施設はまだ未完成で、ランチ営業のレストラン「ザ・キッチン」、昼と夜の営業の「ザ・テーブル」と、アロマ工房の「ザ・ワークショップ」、そしてイベントスペースの「ザ・フィールド」が先行して開業している。スパと宿泊施設は、2021年以降のオープン予定だ。
施設内のレストラン「ザ・キッチン」と「ザ・テーブル」で腕を振るうのは、滋賀県出身の押谷俊孝シェフ。滋賀県長浜市のイタリア料理店「PASSO」で6年間、オーナーシェフとして人気を博していた。と同時に、学ぶ機会が減っていることが気がかりだった。そして、国内外を旅して富山を訪れたときに、自然の豊かさ、食材の豊富さが海外よりも魅力的に思えたという。
もともと滋賀の伊吹山は、織田信長が薬草園を造ったハーブゆかりの地。ハーブにはことさら興味を持っていて、「PASSO」でもハーブは自家栽培していたという。他にないものを突き詰めた料理を創りたいと考えていた押谷シェフが、ヘルジアン・ウッドと出会ったのは必然だったに違いない。
「ザ・キッチン」では、プレートのランチセットメニューを提供しているが、事前に予約すれば、奥の個室で昼にコース料理をいただくことができる。この個室がガラス張りで見晴らし抜群! 田園風景を眺めながら食事を楽しむことができるのだ。
料理にはハーブが多用されていて、美味しいだけでなく、身体が元気になっていくように感じられる。自家製のパンにも、このご時世ならではの免疫力を高めるエルダーフラワーが使われていたりする。
飲み物のペアリングは、アルコールにこだわらないのであれば、ハーブティのペアリングをお勧めしたい。ハーバルセラピストの山口千春さんが、敷地内のハーブ園で収穫したハーブを使って、それぞれの料理に合わせたハーブティーを淹れてくれる。
2021.02.05(金)
文・撮影=たかせ藍沙