オープンキッチンのレストランは26席。カウンター4席、ホール3卓、個室2室となっている。大きな窓からの眺めも素晴らしい。 5種類の美しいアミューズ。手前から時計回りに、L'évo鶏レバーペーストを挟んだビーツのマカロン、香箱ガニが入った細長い八尾もなか、ヤギのチーズのグジェール、熊の手のタルト菊芋チップ載せ、山椒の殻をまぶした深海魚のゲンゲ。 オープンキッチンなので、メインホールからは調理する谷口シェフの姿が見える。窓の外の景色を眺めるならテーブル席がいいけれど、調理中のシェフの手元まで眺めたいならカウンター席がお勧めだ。 左:花で飾られた寒ブリと紅大根のマリネには、自家製のチョウザメキャビアがほどよい塩味を加えている。右:月の輪熊の赤身スライスには、熊のジュレとウニ、山菜のゼンマイとスス竹。さっぱりとした赤身にウニとジュレが濃厚さをプラスして絶妙に調和している。 利賀村のみつ子おばあちゃんが育てた赤かぶは、腐葉土を使った包み焼きに。ゆっくりと蒸し焼きにされることで、赤かぶの旨みと甘みが最大限に引き出されている。 L'évo鶏。ベースとなる鶏は、満寿泉の酒粕などを飼料に使って、谷口シェフが生産者さんとともに開発したもの。中に熊の内蔵で炊いたご飯を詰めて焼いている。鶏と熊がお互いを引き立てている。器は、東岩瀬を拠点とする釋永岳さんが、「レヴォ」の敷地内の土を練り込んで焼きあげたオリジナルだ。 真鱈は、イカ墨を使った富山の塩辛「イカの黒づくり」を塗って熟成させて熾火で焼く。添えられているのはカリフラワーのソース。右側に置かれているのは敷地内に生育しているクロモジの枝。ほのかな香りを楽しみながら真鱈をいただくのだ。 猪のクラシタ(肩ロース)。添えられているのは、ほうれん草、寒干し大根、つぶつぶのかわいい形をしたチョロギ。絶妙な火入れは谷口シェフの真骨頂だ。 高村刃物製作所のナイフ。地元利賀村の木を組み合わせ、隙間に自然の色を表現した樹脂を流し込んで成型したもの。肉に吸い込まれる切れ味と、細部へのこだわりが料理の味を引き立ててくれる。 デザートの後のプチフールは5種類。フィナンシェ、洋梨とレモングラスのパート・ド・フリュイ、ブールドネージュ、富山棒茶を使ったタルトレット、生キャラメル。キャラメルに刺さっているのはクロモジの小枝だ。 雪景色の中に佇むメイン棟。その後の谷には川が流れ、その先に山が見える。 「コテージ1」は35平方メートル。ワイドキングサイズのベッドが1台で、定員は2名。 49平方メートルの「コテージ3」には、ワイドダブルサイズのベッドが2台で、定員は4名。眺めのいいテラスがあるが、この日は屋根から落ちた雪が積もっていた(笑)。これも豪雪地ならではの冬の風物詩だ。 メイン棟のロビーラウンジ。全面ガラス張りで絶景を楽しめるようになっている。 もともとこの地にあった古民家の窓枠が間仕切りに。スタイリッシュなインテリアに温かみを加えている。 コテージ内に置かれている家具は、もともと古民家で使われていたもの。 フィンランド式サウナ。チェックイン時に入浴時間を決める。夕食の前に整えてもいいし、朝食前にシャキッと目を覚ますのもいい。 朝食は、赤かぶ漬けをはじめ、かっちり(じゃがいも)、きくらげ、ハタハタの開き、かぶの葉の和え物、南蛮味噌、染めカボチャ、センナ、鹿のしぐれ煮など。器だけでなく、器と同じ素材のテーブルもすべてオリジナルだ。 オープン祝いの花に囲まれる谷口英司オーナーシェフ。エントランスからロビーラウンジまで、日本各地から贈られた花やお酒で溢れていた。 宿泊コテージ側からみたメイン棟。もうすぐディナーが始まる。 ガラスを通して光が差し込む多目的スペース「ザ・フィールド」。右奥に見えるのはレストラン棟。 ランチのみ営業している「ザ・キッチン」からは、ガラス越しに田園風景を望むことができる。イスやテーブルはすべて富山産の杉で作られている。 「ザ・キッチン」は、外壁の断熱材として藁が使われている。季節が変わると新しい藁に交換するのだという。茅葺き屋根ならぬ、藁入りの壁だ。 「ザ・キッチン」の奥にある個室「ザ・テーブル」。2人分のテーブルセッティングが横並びなのは風景を楽しむため。なんてステキなロケーション! ノンアルコールのハーブペアリングの最初の1杯は、前菜に合わせたフェンネルとジンジャーのスパークリング。グラスの縁にちりばめられたフェンネルを口に含みながら飲むという演出がなされている。 前菜は、平核無柿(ひらたねなしがき)と名水ポーク、鹿のリエットとカブのピクルス。 氷見の寒ブリのタルタルには、たっぷりの色鮮やかな大根などの野菜とハーブ。セロリオイルとゆず酢のドレッシングで。ドレッシングの容器がビーカーなのは製薬会社ならでは。身体が喜ぶ一品だ。 真鱈の白子をカダイフ(トルコの極細麺)で包んでアロゼ(フライパンで油をかけながら焼く)したものを、月桃と生姜のソースでいただく。衣のカリッとした食感とふんわりした白子の食感も楽しい。 左:鱈のピルピル(オリーブオイル煮)の上に載っているのは、濃厚なアヒルの卵と茶樹茸のソテー。 ワイングラスに入ったペアリングのハーブティーは、ヨモギ、ラベンダー、ハマナスのブレンド。 右:網脂で包んでソテーしたノドグロはシンプルに見えるが、薄切りの2枚の身の中に刻んだ身と新米が隠れていて手の込んだ一品。タイムの香りとともに。 食後にはハーブティーを選びたい。カモミールとレモングラスは自家農園から。他に、マローブルー、レモンバーム、リンデンを目の前でブレンドして淹れてくれる。好みで富山産のはちみつで甘みを足して。身体を温め、口腔内から胃腸にかけての粘膜の保護と修復の効果を期待できるブレンド。 押谷俊孝シェフ(右)と、ハーブセラピストの山口千春さん。 ハーブを使ったさまざまなイベントが催される「ザ・ワークショップ」。オリジナルのコスメやハーブティを購入することもできる。 「ザ・ワークショップ」の奥では、施設内で収穫したハーブを使ってエッセンシャルオイルを抽出している。 さまざまな種類のハーブティ。どれを選んだらいいか、ハーブのエキスパートが味や効用のアドバイスをしてくれる。 自社ブランド「Taroma」のオリジナルプロダクツ。左からルームスプレー、消毒用アルコール、マッサージオイル。ホームページからメールオーダーもできる。 ガラス屋根の下には、天然木を組んだ躯体がある。こちらも隈 研吾氏のデザインだ。 1本ずつがサイズも角度も違う。それぞれはまっすぐな木材なのに、まるで波打っているような曲線が美しい。