カウンター越しの調理に舌も目も満たされる「御料理 ふじ居」

 富山市の北部にある港町・岩瀬は、神通川と富岩運河が富山湾へと繋がる、かつての水運の要衝。江戸時代から明治30年頃まで、大阪と北海道を行き来する北前船の中継地として栄えた町だ。廻船問屋や釣具屋、薬問屋、海産問屋などが軒を連ねてにぎわっていた。当時の木造古民家が残る街並みは商人たちが行き交った港町の面影を色濃く残している。ここは、富山の銘酒「満寿泉」の「桝田酒造」があることでも知られる町だ。

 最寄りの東岩瀬駅までは、富山駅から富山地鉄富山港線の路面電車で約20分。そこから徒歩10分。600メートルほどの長さの岩瀬大町通り周辺に、今、食通たちの熱い視線が注がれている。2019年から、次々と美味しいお店がオープンしているのだ。

 木造の外壁に架けられた白い暖簾。その先に、小さな池を囲んだ中庭に面して「御料理 ふじ居」がある。店主の藤井寛徳(ひろのり)さんは、鮮魚店を営む父親の背を見て育った。辻調理師専門学校で学んだ後、金沢の「銭屋」、京都祇園の「味舌(ました)」、富山の「海老亭 別館」で修業を重ね、2011年に故郷の富山で独立。富山駅近くに「御料理 ふじ居」をオープンさせた。

 それから8年後の2019年8月、現在の東岩瀬に移転。古民家を改装した瀟洒な佇まいの建物での再オープンとなった。カウンター席と個室があるが、ここではカウンターを選びたい。ガラス越しに望む中庭の風景を背に、目の前で調理してくれるからだ。

 地元富山の食材を使った、四季折々の季節を感じさせてくれるお料理をいただくことができる。今回ご紹介するお料理は、秋の松茸のシーズンのもの。旬のキノコなど山の幸はもちろん、魚介類も港町ならではの鮮度のよさだ。朝、港に揚がったばかりの魚介をその日のうちにいただくことができる。

 次々と活きのいい魚介類が目の前で調理されていくライブ感と「満寿泉」のペアリングで、時間が経つのが早い。気がつくとお腹が口福でいっぱいになっていた。季節ごとに、食材もお庭の風景も変わるので、何度も通いたくなる富山の名店だ。

御料理 ふじ居

所在地 富山県富山市東岩瀬町93
電話番号 076-471-5555
https://www.oryouri-fujii.jp/

2021.02.17(水)
文・撮影=たかせ藍沙