地産地消にこだわったイタリアン「ピアット スズキ チンクエ」

 食通の方なら店名に見覚えがあると思うもしれない。シェフの鈴木五郎さんは、麻布十番の星つきイタリアン「ピアット スズキ」で修業した料理人なのだ。名字は同じ「スズキ」だが、親族ではなく偶然なのだとか。

 神奈川県小田原市の出身という鈴木シェフは、大学卒業後に半年間ワーキングホリデーでオーストラリアへ。そこでカフェや鮨店で働いたことがきっかけとなり、料理の道を目指したという。銀座の「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」では皿洗いから始め、「ピアット スズキ」で10年間働いた。その後「ラ・ベットラ・ダ・オチアイ」に戻ったときに、富山市内出店の話があり、富山へ。3年間働いてから退職、独立準備に入った。

 鈴木シェフが富山移住を決意した最大の理由は、その食材の豊かさだった。1年間、市内の鮨店で魚の処理等を学び、富山湾の食材、海の幸以外の食材と徹底的に向き合った。そして、2017年3月に、廻船問屋・宮城家の古民家の一角で「ピアット スズキ チンクエ」を開業した。

 「ピアット スズキ チンクエ」は、古民家レストランが多い岩瀬地区にあってまるで新築のようなモダンな佇まい。実はこのお店、2017年の開業からたったの3か月で火災に見舞われた。意気消沈する店主を、地元岩瀬地区の人々が支えて再建。2019年3月に再オープンしたのだ。

 新しく造られたお店へのアプローチには古民家の名残りがあり、扉を開けると広々としたモダンイタリアンな空間が広がる。壁一面を占める大きなガラス窓からは大きなテラスと庭の緑を望むこともできる。地元の皆さん、鈴木シェフのお料理のファンの皆さんとの強い絆で再オープンした、たくさんの愛で支えられたイタリアンなのだ。

 店内は広々としていて、オープンキッチンに面したカウンター6席と、4人掛けのテーブル席が5卓の、全26席がある。テーブル席を配した壁には樹木のイラストがあり、オープンキッチンの壁は茶系のタイルがポップな幾何学模様のように並べられている。

 地産地消にこだわり、朝、水揚げされた魚介や、採れたての野菜をその日のうちに調理。プレゼンテーションも地中海の太陽のように華やかだ。ペアリングはワインだけでなく、地元岩瀬の銘酒「満寿泉」もラインナップ。こちらも地産地消だ。

 鈴木シェフの穏やかな人柄も相まって、美味しくて癒やされる食事が約束されている。

Piatto Suzuki Cinque(ピアット スズキ チンクエ)

所在地 富山市東岩瀬町93
電話 076-482-4014
https://www.facebook.com/piattosuzuki.cinque/

2021.02.17(水)
文・撮影=たかせ藍沙