“女性キャスター”と呼ばれなくなる日まで
ーー“女性”キャスターと呼ばれることはどう思っていますか。
女性キャスターであることは全く珍しいことではないですし、そもそも女性、男性と分けるものでもないですよね。
ただ、先日「NEWS23」で“「生理の話」はもうタブーじゃない!”という特集をした時など、女性ならではの視点で「よくやってくれた」というお声をたくさんいただきました。
まだまだ、女性であることで掬い上げることのできる社会の声はたくさんあると思いますし、そういった文脈では女性キャスターからの発信に期待があるんだなと感じます。ただ、今や男女という単純な二元論を超えて、性のあり方も非常に多様です。ゆくゆくは30代のキャスター、50代のキャスターというような単なる属性・個性のひとつになったらいいですよね。それまでは隠れた声を届ける努力をしていきたいです。
くよくよしたり、納得させたりの繰り返し
ーーうまくいかないことがあって落ち込んでしまった時や暗くなってしまった時は、どんなふうに気分を切り替えていますか。
うーん、どうしたらいいんでしょう。子どもが産まれるまでは好きな映画を見たり、音楽を爆音で聴いて気持ちを紛らわせたり、大好きなウイスキーを飲んだりしていましたが、今は自分に使える時間がない。お風呂もゆっくり入れないし、ひとりでリラックスする時間もほとんどないんです。ただ、やるべきことがたくさんあるのでスイッチを切り替えざるを得ないのは、ある意味助かっているのかもしれません。
子育ても仕事も100%で向き合うのは無理だし、心も体ももたないとわかっているんですが、もどかしさがあります。取材にも出たいし、キャスターとしてインプットするべきことがたくさんあって、焦りの気持ちは隠せません。
そんな時、職場の先輩が「子育てもひとつの現場だよ」と言ってくださって、その言葉にハッとしました。今、自分はひとつの貴重な現場を経験してるんだ、仕事に還元できることがあるのかもしれないと前向きになれたんです。
そんなふうに気持ちを切り替えながらなんとかやっているんですが、すぐにまたくよくよしてみたり、自分を納得させてみたりの繰り返しです(笑)。
ーーまだまだ大変な状況が続きそうですが、この先はどんな目標を持っていますか。
本当は状況を俯瞰したり、長い目で見ることも必要だと思うのですが、今は公私ともに日に日に変わっていく状況で、毎日のニュースと向き合うのに精一杯です。
それに、たとえ1年後、5年後の目標を持っていてもいつ、何が起きるわからないし、どう頑張っても叶えられないこともある。コロナ禍で、それが身にしみたこの1年でした。
目の前で起きていることには柔軟に対応し、「こうあらねばならない」と頑なになりすぎず、これからももがき続けながらニュースをお伝えしていこうと思っています。
出産を経て、あらゆる女性にいっそうのリスペクトをするようになったんです。100%子育てに力を注いでいるお母さんもそうですし、出産や結婚という選択をしなかった方もそう。次から次へと直面する選択肢の中で、どれかを選べば必ず失いものがあって、きっと何かにもがいている。そんな中でもお会いする女性は皆、凛として見えるんですよね。
それぞれの選択、それぞれの幸せを応援し、私自身も力と勇気をもらいながら、一緒に頑張っていけたらと思っています。
『NEWS23』TBS系
月~木曜 よる11時
金曜 よる11時30分
2021.01.11(月)
文=嵯峨崎文香
撮影=藤原江理奈
ヘアメイク=毛利仁美
スタイリスト=せいのあんり
企画協力=赤石晋一郎