家出少女たちの物語
『里奈の物語』
“みんななんでか、女が男より強いって気づくんだよ”
【本のポイント】
「ベストセラーとなった『最貧困女子』をはじめ、長年にわたり、裏社会、触法少年少女を取材してきた筆者、初の小説です。
これまでのルポでは書ききれなかったこと──主人公の家出少女・里奈が怒り、叫び、笑い、泣きながら、路上を駆け抜けていく物語です。
いささかハードな本かもしれません。が、この状況下、私の脳裏をよぎったのは、里奈たちはどうしているだろうか、ということでした。
親に棄てられ、施設で育ち、中学卒業とともに家出し、都会の裏通りで、必死で生き抜こうとする少女たち。もちろん、住民票も保険証も、帰る家もありません。
著者の鈴木大介さんは、そうした少女たちを、いわゆる社会の底辺に生きる弱者としてではなく、喜怒哀楽を持った人間として描こうとして、小説という形式を選びました。
今回の騒動のなかで、彼女たちの姿を見過ごさないでほしい。
引用の一文は、長年の取材活動から、著者自身が体感した言葉だと思います。生きづらい今を生きている女性たちへの、この熱いメッセージが届いてほしい、と切に願っています」(担当編集)
【あらすじ】
北関東の地方都市に生まれた里奈は、親に棄てられ、小学校にもろくに通えず、児童養護施設にひきとられる。中学の卒業式を待たずして地元を棄て、東京近郊を転々としながら売春を生業に生き抜き、ついには十数名の家出少女を統括する売春組織のリーダーになりあがるが──。
里奈の物語
著者 鈴木大介
文藝春秋 1,900円
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2020.05.27(水)
文・撮影=文藝春秋