大切な人との絆を描く短編集
「バルタン最期の日」(『モノレールねこ』所収)

“俺たちザリガニは、たとえ命よりも大切なこの両のハサミを失ったとしても、見事再生させることができる……脱皮することによって。
 人間もそうだといいのに、と思う。傷ついた心とか、無くしかけた自信とか。そういうものが、魔法みたいに、簡単に癒えてしまえばいいのに。”

【話のポイント】
「短編集に収められた『バルタン最期の日』の語り手はなんとザリガニ。お父さん、お母さん、小学生の息子という普通の家族の悩みを、台所の隅の水槽から見守るバルタン君。

 お母さんの「脱皮」による奮闘、そして再び前を向こうとする家族。彼らを救った小さなザリガニのことを思うと、勇気が湧いてくるのです」(担当編集)

【本のあらすじ】
小学生のぼくは、ねこの首輪に挟んだ手紙で「タカキ」と文通をする。ある日、ねこが車に轢かれて死に、タカキとの交流は途絶えたが……。表題作の「モノレールねこ」のほか、ザリガニの俺が、家族を見守る「バルタン最期の日」など、夫婦、親子、職場の同僚といった、日常にさりげなく現われる、大切な人との絆を描いたハートウォーミングな8編。

モノレールねこ

著者 加納朋子
文春文庫 560円
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2020.05.27(水)
文・撮影=文藝春秋