アイヌの戦いと冒険を描く歴史大作
『熱源』
“弱きは食われる。競争のみが生存の手段である。そのような摂理こそが人を滅ぼすのです。だから私は人として、摂理と戦います。人の世界の摂理であれば、人が変えられる。”
【本のポイント】
「明治から太平洋戦争の終結まで、ある樺太アイヌとポーランド人の政治犯二人を主人公にした本作は、第162回直木賞を受賞しました。
いわれなき迫害と差別を受けても力強く生きた人々の矜持に、胸が熱くなります」(担当編集)
【あらすじ】
樺太で生まれたアイヌ、ヤヨマネクフ。開拓使たちに故郷を奪われたのち、天然痘やコレラの流行で妻や友人を亡くした彼は、名前を変え、ふたたび樺太に戻ることを志す。一方、リトアニアに生まれたブロニスワフ・ピウスツキ。ロシアの同化政策により、母語であるポーランド語を話すことを許されなかった彼は、皇帝の暗殺計画に巻き込まれ、苦役囚として樺太に送られる。文明を押し付けられ、アイデンティティを揺るがされた経験を持つ二人が、樺太で出会い、自らが守り継ぎたいものの正体に辿り着く──。
2020.05.27(水)
文・撮影=文藝春秋