鎮魂と生への祈りをこめた長編
『ムーンナイト・ダイバー』

“私自身も、もっと深く知りたいと思いました。あの災害が、私たちにどんな衝撃を与え、どんな影響を残し、いまに至っているのか。また未来に対して、何を語り得るのか。”

【本のポイント】
「東日本大震災後、深夜に海に潜り、被災者たちの遺留品を回収することを続ける男が主人公の物語。福島の原発や帰宅困難地域なども取材して書かれた、『悼む人』の著者らしい3.11への鎮魂の書です。

 上記の引用文は、厳密にいうと本文からではなく、文庫化にあたり書いてもらった『失われた命への誠実な祈り〈文庫版あとがきに代えて〉』より。単行本刊行から3年経って、思うところを書いていただいたもの。

 小説はもちろんですが、この〈あとがき〉まですべて読んでほしい熱のこもった文章で、『あの災害』を『コロナ騒動』に置き換えても読めると思います」(担当編集)

【あらすじ】
ダイビングのインストラクターをつとめる舟作は、立入禁止の海域で被災者たちの遺留品の引き揚げを行っていた。「あの日」がまだそのまま残された海底。ある日、遺族の一人である女性が現れ、なぜか亡くした夫の指輪を探さないでほしいと言う──。3.11後のフクシマを舞台に、生への祈りをこめた作品。初出は『オール讀物』1000号記念となる2015年8月号。

ムーンナイト・ダイバー

著者 天童荒太
文春文庫 640円
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2020.05.27(水)
文・撮影=文藝春秋