「効果」を支える植物研究はシャネルのラグジュアリーの真髄
ここからはシャネル リサーチ&テクノロジー 原料開発ディレクターのニコラ フザッティさんにご登場いただき、シャネルの植物研究をブラ魂!
「植物は自然界で生き抜くためにさまざまな活性分子を生み出す、小さな科学工場のようなもの。肌にも有用な成分の宝庫です。スキンケアのクリエイションは植物の収集から始まります。
世界中の生物多様性のホットスポットを探索し、興味のある植物を持ち帰って分析し、その効果を明らかにする。そして、有望な分子を特定し、最も有用なものだけを取り出して独自の成分を開発します」とニコラさん。
2006年、サブリマージュの最初の天然由来有用成分として誕生したのがヴァニラ プラニフォリア PFAだ。マダガスカル島で発見されたヴァニラの恵みを高純度に取り出すために独自の“ポリフラクショニング(PFA)”という抽出技術を開発したほど。
「ヴァニラ プラニフォリアの花や果実(さや)からさまざまな成分が発見され、多くの天然由来成分がサブリマージュの製品に使用されています」
新しい有用成分の開発も着々と。今注目しているのは南仏アルプスだ。
「フレグランスの香料原料の産地として知られていますが、実は高地に育つ希少な薬用植物の宝庫。2010年よりニース大学と共同で研究をスタートし、500を超える野生植物の調査を行いました。そこから約60の植物を厳選し、さらに科学的な知見に基づいて10の植物に絞り、エキスを抽出。その分析を進めています」
ラ コレクシオン ルミエールのキー成分、アンティリスはその中で勝ち残った一つ。強い日差しを浴びてスクスクと育つ逞しい植物で、その姿を見た途端「可能性を感じた」とニコラさん。抽出されたエキスは外的ストレスから肌を守り、色素沈着のメカニズムに働きかけることがわかったという。ヴァニラ プラニフォリア 濃縮ウォーターとのタッグも注目だ。
「天然由来成分の開発は時間も手間もお金もかかりますが、最高の製品を作るためには必要なこと。一切の妥協はしません。今後もサプライズな成分が控えているのでお楽しみに!」
畑から製品まで 徹底管理から生まれる“確かさ”
シャネルのスキンケア開発の強みは、植物の栽培から製品までシャネルの管理のもとで行われていること。
専用のシェーダー(栽培施設)では土壌作り、種まき、収穫までほぼ手作業。収穫後直ちにフランスのラボへ空輸され、何段階にも及ぶ抽出&生成プロセスを経て、効果を損なうことなく高純度の天然由来成分が完成する。
時間と手間をかけてこそ究極のラグジュアリー。シャネルから教わったこと。
シャネル サイエンティフィック コミュニケーション ディレクター
アーメル スローさん
薬学博士。2007年より、シャネルのスキンケア及びメークアップにおける、科学的情報のコーディネーターかつスポークスパーソンとして活動。2015年7月、現職に就任。
シャネル リサーチ&テクノロジー 原料開発ディレクター
ニコラ フザッティさん
20年以上にわたって植物由来の成分を研究し、医薬品・化粧品に応用するための生成開発に従事。2012年より現職。シャネルの化粧品有用成分の研究及び生成において責務を担う。
Column
吉田昌佐美のブランド魂発見!
鋭い視点からの取材力と情報の蓄積に定評を持つキャリア35年の重鎮美容ジャーナリストが、コスメブランドそれぞれの「強み」を解説。さまざまな逸品ビューティアイテムに込められた「魂」に迫ります。
2020.04.04(土)
Text=Masami Yoshida
Photo=Kenichi Yoshida