映画のロケ地に滞在
役作りのイメージを膨らませて

 映画はそのまま台本を表現するというよりは、場面ごとにその場で出てくるものを表現するということだと思っているんです。なので、そういう形で準備をしました。

凰稀 緑島に住まわれたのですか?

クー 他の仕事もありましたので最初に行った時は3日間です。その時はまだ台本もなかったのですが、事前に役づくりをしていたので、台本をもらった時には役にすぐ入り込めました。

凰稀 考えるのではなく、体に全部叩き込むということにおいては、舞台も一緒かもしれません。

 舞台は1カ月稽古して、本番の20日間くらいずっと新鮮な気持ちで演じ続けなければいけないので、それはそれで難しいんですけど。

クー 毎日新しい気持ちでというのはすごく難しいと思いますし、それができるのは素晴らしいと思います。

 舞台の場合はやってすぐお客さんの反応が見られますけど、映画の場合は2〜3年後ですね。この作品は撮影してから台湾で上映されるまで2年かかりました。

――凰稀さんは『あなたを、想う。』をご覧になっていかがでした?

凰稀 台湾は高雄に1度しか行ったことがないのですが、台湾の綺麗な景色から始まったので、台湾てこんなに綺麗だったんだ! と思いました。

 最初は何も分からずに見ていたので、ちょっと怖い映画なのかなと思っていたんですが、見終わった後は、心がほっこり温かくなる映画でした。ドキュメンタリーみたいな感じなのかと思ったりもしたんですが、そうではなくて……。

 たぶん誰もが感じるだろうことを映画で見られたのがすごく面白かったです。

クー 怖いというのは予告編ですか?

凰稀 違います、影のない男の人が出てきたり……。

クー あぁ……凰稀さんはすごく繊細なかたなんですね。

――凰稀さんが台湾に行ったのはいつですか?

凰稀 今年の夏です。

 ごはんも美味しいですし、“台湾式シャンプー”もやっていただいて。台湾の男性が結構日本語で話しかけてくださって、優しい人が多かったです。

クー 台湾のシャンプーは日本のシャンプーと技術的に違うんですか?

凰稀 座ったままの状態でシャンプーをすることが日本ではないですし、マッサージしてくださったり、シャンプー中に髪の形を変えてくださったりするので面白かったです。

クー すごく時間をかけてやってくれるんですよね。

凰稀 すごく気持ち良くて。髪の毛がふわっふわになりました。

――映画の舞台は台東でしたが、クーさんが思う台東のおすすめは?

クー 台東や花蓮はすごく自然が豊かなところです。日本の方にたくさんきて欲しいと思います。空気も気持ちいいですし、都市とは違う雰囲気が味わえると思います。

凰稀 映画に出てきた緑島は日本で言ったら沖縄みたいな感じですか? 緑も海も、ものすごく綺麗でした。

 人魚が泳いでいるシーンがあるじゃないですか。いろいろなアングルから撮られていて、とにかく水が綺麗。

クー あのシーンはマレーシアの女優リー・シンジエさんが実際に潜っていますが、撮影がとにかく大変でした。

 素潜りができないのに長い時間、海に入らなければならなくて。何度も船に上がって海に潜ってと繰り返さなければならなくて、本当に大変でした。

2019.11.30(土)
構成・文=濱野奈美子
撮影=MEGUMI