表向きは「いい人」なので
タチが悪い

 ずるい人は、「自分に甘い」人です。

 世界が自分を中心に回っていると思っている。自分に都合のいいようにルールを曲げてもいいと思っている。で、実際にそうやって生きてこられた人です。

 そういう人は、人に甘えるのがとても上手です。

 なので、人当たりもよく、敵も少ない。あからさまに意地悪だったり、超わがままだったりすれば、周囲もきつく当たるのですが、表面上はにこやかでいい人なので、友達も少なくありません。

 ですから、そういう人に頼まれ事をされると、断りにくい。

 断ると、周囲からも「それぐらいやってあげなよ」と、まるでこっちが悪者のような扱いをうけてしまうからです。ずるいのはあっちなのに。

 これは困りました。

 最悪、引き受けてあげるにしても、一矢報いたい。一発食らわせたい。

 なにかいい方法はないのでしょうか?

「は?」「え?」「ん?」で
シャットアウト

 こういうずるい人を相手にするときは、すかさず、「は?」と驚きましょう。

 本気でなくてかまいません。すぐに冗談めかしてもOK。ですが、一度はこういう強い姿勢、まるでキレているような態度を見せて、様子を見るのです。

「これ、締め切り過ぎちゃってるんですけど、お願いできませんか?」

「えっ!?」

「……あ、無理ですよね。すみません、無理ならいいんです」

「ちょっと急いでるのよ。先にいい?」

「は!?」

「……(しぶしぶ引き下がる)」

「ごめーん、いま細かいのないんだー。今日も出しておいてもらえる?」

「ん?」

「え?」

「えっ!?」

「……あ、ごめん、細かいのあった。ごめんごめん」

 強い反応に慣れてないあっちとしては、一瞬、びっくりします。「あれ? いつもはうまくいくのに」と、戸惑います。

 実は彼らも、少しは罪の意識があります。「ダメかな、こんなこと頼んじゃ」とちょっとはびくびくしている。だからこそ、甘えた声で下手に出ているわけです。罪の意識がなかったら、もっと偉そうに、堂々と頼んでくるでしょう。

 ですから、「は?」「え?」「なんで?」「正気?」というニュアンスを込めてびっくりしてみせると、びびって要求を引っ込めてくれる可能性があります。

 「そういうのやめてよ」「ルールは守ってください」と言うよりも、「え?」「は?」と純粋にびっくりしてみせるほうが、あなたとしてもやりやすいでしょう。しかもそのほうがシンプルな効果が望めます。

 ガツンと言ってやるのはめんどうだし、角が立ちます。

 代わりに、びっくりしてみせて、静かにお引き取り願いましょう!

【今回のポイント】
ずるい頼み事をしてくる人は……

◆実は「下手に出ればなんとかなる」と甘えている。

◆NGアクション:強い態度に出ると角が立つ。

◆OKアクション:「え?」と驚いてみせて、お引き取り願う。

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五百田達成(いおた・たつなり)

心理カウンセラー。米国CCE,Inc.認定 GCDFキャリアカウンセラー。東京大学教養学部卒業後、角川書店、博報堂、博報堂生活総合研究所を経て、五百田達成事務所を設立。個人カウンセリング、セミナー、講演、執筆など、多岐にわたって活躍中。専門分野は「コミュニケーション心理」「社会変化と男女関係」「SNSと人づきあい」「ことばと伝え方」など。
Twitter @ebisucareer