布施明から学んだ
ステージマナー

 その後、疎遠になったわけじゃないんだけど、2人とも実家住まいだし、半分アマチュアみたいなものなんで、あんまり仕事もせずにブラブラしているうちに、バンドの存在自体があいまいになっちゃった。

 そうこうしているうちに、アランは、元ザ・スパイダースのかまやつひろしさんや元ザ・テンプターズの大口広司さんとウォッカ・コリンズというグループを作って73年にデビュー。「オートマティック・パイロット」「サンズ・オブ・タイム」という名曲を世に出します。

 一方の僕はといえば、しばらくロックから離れて、ナベプロ関係の仕事を結構請け負っていました。

 布施明さんのバックでもよく演奏してたんですが、布施さんから学んだものは大きかった。

 昔の日劇公演というのは、一日に3ステージもやっていたんですよ。同じ日に3回も同じことをやると飽きてくる。その時に、どうやってお客さんに分からないように悪ふざけをするか。そういうことはずいぶん教わりましたね。

 忘れもしない、「愛の園」(作詞/山上路夫 作曲/平尾昌晃)という曲に、♪ちょうどアダムとイヴのように~ という歌詞があるんですが、布施さんは、この曲を何回も歌うのに飽きてきた頃に、お客さんには気づかれないように、♪ちょうど熱海と伊豆のように~ と歌う。

 ものすごい真顔で歌っているんだけど、その後に、振り向いて僕らにウインクしたりするんです。

 そんな風にロック界から遠のいていたある日、アラン・メリルから久しぶりに連絡が入りました。

» talk05に続く

近田春夫(ちかだ はるお)

1951年東京都生まれ。75年に近田春夫&ハルヲフォンとしてデビュー。80年代以降はビブラトーンズなどを率いてバンド活動を続ける傍ら、タレント、ラジオDJ、作詞・作曲家、CM音楽作家など多彩に活躍する。86年にはプレジデントBPMを名乗って日本語ラップの先駆者となり、87年には人力ヒップホップバンドのビブラストーンを結成。96年からは週刊文春で「考えるヒット」を連載している。現在は、元ハルヲフォンのメンバー3人による新バンド「活躍中」として活躍中。2018年10月には、ソロアルバム『超冗談だから』をリリース。12月には、OMBとのユニット、LUNASUNのアルバム『Organ Heaven』が発売された。最新の著書に『考えるヒット テーマはジャニーズ』(スモール出版)がある。


近田春夫&ビブラストーン
『Vibra is Back』

近田春夫が結成したファンク&ヒップホップバンドがメジャーデビュー前の1989年にリリースした唯一のライブ盤が復刻。DAT一発録音のダイナミズムに圧倒される。ブックレットには、近田自身による楽曲解説と、近田と高木完が時代背景を語り合う対談を収録。
ソリッド 発売中 2,300円(税抜)


近田春夫『超冗談だから』

ソロ名義としては38年ぶりとなるニューアルバム。作詞・作曲・編曲には、秋元康、のん、AxSxE、児玉雨子らに加え、筒美京平マニアの市井の作家などが参加。男性アイドルポップス、ラテン歌謡、ディスコ歌謡、シティポップなど、バラエティに富んだ10曲を収録。
ビクター 発売中 2,778円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65050.html


LUNASUN『Organ Heaven』

近田春夫がDJにしてトラックメーカーであるOMBとともに活動する2人組ユニット、LUNASUNによるアルバム。近田のグルーヴィーな手弾きのハモンドオルガンが炸裂している。ジャケットを飾るのは、画家としても活躍する近田春夫書き下ろしのイラスト。
ビクター 発売中 2,037円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65087.html


近田春夫『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』

近田春夫の長いキャリアにおけるロックおよびポップスのオリジナル楽曲に焦点を絞ったベストアルバム。ソロ名義、ハルヲフォン、ビブラトーンズ、そして現在の所属バンドである「活躍中」の楽曲も収録。最新リマスタリングで過去の楽曲もブラッシュアップされた。
ビクター 2019年2月27日(水)発売 2,778円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65138.html

【取材協力】
本の場所

https://www.honnobasyo.com/