ロック、歌謡曲、ヒップホップ、テクノなど、変幻自在に幅広すぎる最先端のサウンドを世に送るかと思えば、勢い余って、タレント、文筆家、画家としても活躍。
音楽界きっての才人、近田春夫がその67年の半生を自ら語るトークイベントが、2018年6月16日(土)、青山「本の場所」にて開催された。その模様をスペシャル連載としてお届けします!
▼talk03
プロの音楽家としての
スタートライン
1969年の9月、ザ・フィンガーズなどで活躍した著名なギタリストであり、ブリヂストンの創業者の孫でもある成毛滋さんが主催する「10円コンサート」が日比谷野外音楽堂で開催されました。
成毛さんとの縁からスタッフとして参加していたその現場で、私は、とある人物と運命の出会いを果たすことになります。
内田裕也さんです。
今となっては、裕也さんがこのイベントに出演していたのか単に顔を利かせていただけなのか覚束ないんですが、とにかく、楽屋で成毛さんが裕也さんに僕のことを紹介してくれました。
「この男はちゃんとキーボードが弾けるんですよ」みたいなことを成毛さんが言ったのを、裕也さんは記憶していたらしく、しばらく経ったある日、「(裕也氏を上手に真似て)あのさ、ちょっとキーボードを弾いてくれないかな」という連絡が入ったんです。
その仕事というのは、麻生レミさんのバックバンドの一員を務めることでした。
当時の麻生レミさんは、裕也さんがプロデュースを手がけたフラワーズにヴォーカリストとして参加するも、ほどなく脱退、フラワーズがフラワー・トラベリン・バンドと改名して活躍する一方で、自身はソロとしての活動を行っていました。
和製ジャニス・ジョプリンと称された麻生さんのヴォーカルは、今聴いても本当にすごいものです。
2019.02.26(火)
構成=下井草 秀(文化デリック)
撮影=釜谷洋史
写真=文藝春秋