ザ・ワイルドワンズの
バックに起用される
ちょうど同じ頃、もうひとり、やたらと私のキーボードを評価してくれる男が現れました。
現在、アミューズという芸能プロダクションの代表取締役会長を務めている大里洋吉です。
当時、大里さんは渡辺プロダクションにいて、グループサウンズのマネジメントを手がけていたんです。彼が受け持っていたのは、まずザ・ワイルドワンズ。
あの頃、なぜかワイルドワンズは急にジャクソン5を目指すというわけの分からない方向性に迷走し、楽器を捨てて「ネヴァー・キャン・セイ・グッバイ」とかを全員で踊りながら歌い始めたんですよ。
だから、バックバンドが必要になった。そのキーボードとして引き入れられたのが僕なんです。
それに加え、大里さんが担当していたバンドに、ロック・パイロットがあった。
当時、英米ではスーパーグループというのが流行っていました。エリック・クラプトンやスティーヴ・ウィンウッドが組んだブラインド・フェイスとか、プログレ系のエマーソン・レイク&パーマーとか、ロックの世界の大物同士が結成するバンドですね。
そのムーヴメントに呼応する形で、日本でも、タイガースとスパイダースとテンプターズという人気GSの元メンバーが集ったPYGというバンドが誕生したりしました。
ロック・パイロットは、いわばその小型版でした。ピーターズやファニーズといったB級GSの残党が集まったこのバンドでも、サポートメンバーとして私がキーボードを弾くことになりました。
さらに、アラン・メリルという米国人ミュージシャンもまた、大里さんが担当していました。有名なジャズシンガー、ヘレン・メリルの息子であり、後に、ジョーン・ジェット&ザ・ブラックハーツの大ヒット曲「アイ・ラヴ・ロックンロール」を作曲することになる男ですね。
彼は、ザ・リードという外国人やハーフばかりのグループで活動していたんですが、鳴かず飛ばずで解散してしまい、ソロに転身していた。
大里さん曰く「ワイルドワンズ、ロック・パイロット、アラン・メリル、この3組のキーボードを全部やってくれたら、1組分のギャラを払うよ」。
今思えばどう考えても割に合わない仕事なんですが、そんな誘いに応じて、僕は本格的に音楽業界に足を踏み入れることになるわけです。
近田春夫『超冗談だから』
ソロ名義としては38年ぶりとなるニューアルバム。作詞・作曲・編曲には、秋元康、のん、AxSxE、児玉雨子らに加え、筒美京平マニアの市井の作家などが参加。男性アイドルポップス、ラテン歌謡、ディスコ歌謡、シティポップなど、バラエティに富んだ10曲を収録。
ビクター 発売中 2,778円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65050.html
LUNASUN『Organ Heaven』
近田春夫がDJにしてトラックメーカーであるOMBとともに活動する2人組ユニット、LUNASUNによるアルバム。近田のグルーヴィーな手弾きのハモンドオルガンが炸裂している。ジャケットを飾るのは、画家としても活躍する近田春夫書き下ろしのイラスト。
ビクター 発売中 2,037円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65087.html
近田春夫『近田春夫ベスト~世界で一番いけない男』
近田春夫の長いキャリアにおけるロックおよびポップスのオリジナル楽曲に焦点を絞ったベストアルバム。ソロ名義、ハルヲフォン、ビブラトーンズ、そして現在の所属バンドである「活躍中」の楽曲も収録。最新リマスタリングで過去の楽曲もブラッシュアップされた。
ビクター 2019年2月27日(水)発売 2,778円(税抜)
https://www.jvcmusic.co.jp/-/Discography/A026255/VICL-65138.html
【取材協力】
本の場所
近田春夫が語る近田春夫
2019.02.26(火)
構成=下井草 秀(文化デリック)
撮影=釜谷洋史
写真=文藝春秋
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