アラゴンが誇る
スペインの最も美しい村々へ

 最近日本でも知名度の上がってきたスペインの「最も美しい村」。14の村から活動をはじめ、2019年現在68の村が加盟している協会だ。

 村の規模や文化財の有無などの条件を満たした上で、審査され登録された村々。アンダルシアの白い村なども登録されていて、美しい村巡りも行われている。

 毎年秋、スペインの有力紙「EL PAIS」社では、これらの村のランキングを発表。2018年、このアインサは第4位だった。
 
 人口1,500人ほどの小さな村アインサは城砦をもち、石づくりの中世の街並みが美しい。

 くわえて準ピレネーの岩山であるペーニャ・モンタネーザの眺望も素晴らしく、まさに時を超えてあるような「最も美しい村」のひとつだ。

 アインサは小国の首都だった街で、イスラム教徒の砦だった村アルケサルと対峙している。いまはキュートな中世の街も、かつてはレコンキスタの前線基地だったのだ。

 アインサは小1時間も巡れば、村全体を見ることができるスケール感。その小ぢんまりとした感じにツーリストは癒されるのだが、実はおいしいゴハンも食べられる。

 何気ないレストランに入って食べた料理が、文字通り舌をまくほどおいしいという。さすが美食の国なのだった。

 アインサに対峙していたのがアルケサル。アラビア語の冠詞“アル”がつくこの村が、イスラム教徒の砦だったわけで、レコンキスタの結果、キリスト教国がこの地を奪還した。

 地図で位置関係を見ると、壮絶な闘いに思いがいく。中世も中世、11世紀前後の闘いは、いったいどんなだったのだろうか。

 このアルケサルも「スペインの最も美しい村」加盟。

 お天気のせいもあってアインサよりも暗いイメージに見えるが、ぐるぐると回っていると面白い光景にさまざま出会える。アインサが可愛い村なら、アルケサルは好奇心がそそられる村といえるかもしれない。

 アラゴン州はこうした美村の宝庫なのだが、2018年だけでなく度々「スペインで最も美しい村」の第1位に輝くアルバラシンもこの州の南にある。

 アインサやアルケサルとは違いキリスト教徒vsイスラム教徒の闘いではなく、アラゴン王国に併合されるのを拒んだ歴史が長いらしい。もちろん“アル”がつくので、もともとはイスラム教徒が興した村だ。

 断崖の街に細長くつくられたアルバラシンは街全体がピンク色をしているので、“バラ色の村”ともいわれる。村の家を建てるのに使う界隈の土の色によるもので、この色がまた人気の秘密だ。

 そしてアルバラシンはまた、建物の構造が独特なことでも知られる。

 土地の限られた断崖の地に発展すべく、上に行くほど大きくなる家というなんとも不安定ながら、興味をそそられるつくり。

 3つの美しい村を見比べただけでも、それぞれに趣が違い面白い。「最も美しい村」はスペイン全土にあるので、ひとつひとつ回ってみるのも楽しそうだ。

2019.04.30(火)
文・撮影=大沢さつき