「美しい村ランキング」の常連、アルバラシン

城壁を見上げる、村の入口付近。レンタカーで行く場合は、このあたりにある駐車場に車を停め、村内の散策は徒歩で。

 スペインの田舎を移動していると、思いがけなく美しい村に出会うことが珍しくありません。旅行雑誌などでも「美しい村ベスト○」「週末に訪れたい素敵な小さな村○選」といった特集をよく見かけますが、そういったランキングに必ずと言っていいほど挙げられる村のひとつが、今回ご紹介する「アルバラシン(Albarracín)」(アラゴン州テルエル県)です。

城壁に向かって斜面を登っていくと、次第に村の全景が見えてくる。カテドラルの、青と白を基調としたタイル屋根の鐘楼が目を引く。

 たいていこういった村は、近付くにつれその趣のある全景が見えてきて「雰囲気の良さそうな村だな~」というのが到着する前から分かるものですが、このアルバラシンはちょっと違います。村のシンボルともいえる城壁も、折り重なる山並みに隠れて、到着する直前まで見えてきませんし、村の外からみれば、その城壁以外はなんの変哲もない村といった感じなのです。ところが、村の入口から数分歩いたと思ったら、いつの間にか、築何百年なのかも分からない古い家々が連なる路地に自分がたたずんでいることに気付きます。

 時を経てすっかりゆがんでしまった小さなバルコニー、この村の特徴である少しピンク色を帯びた石壁の奥の窓からもれるわずかな灯り、迷路のように入り組む細い道……どこを切り取っても絵になる風景が続き、さすが「美しい村ランキング」の常連だけのことはある、といったところです。

左:迷路のような路地が続く村内。
右:建物は築数百年のものも珍しくないが、現在もほとんどが住居として使われている。

 ほどなく、ずんぐりした石のアーチに囲まれたマヨール広場に到着。そこから伸びる2本の道のうち右側を進んでいくと、山の斜面を登る道路へとつながっていき、その先には堂々たる城壁が思いのほか間近に迫っています。城壁は自由に上れますが、なんと手すりなどの安全対策は一切なし。一歩踏み違えれば転落確実という、高所恐怖症でなくとも足がすくむような箇所が多く、この状態でこれといった事故が起きていないのが不思議なくらいです。

文・撮影=坪田みゆき