サンティアゴ巡礼の拠点のひとつ
ハカの街

 ハカの街はピレネー山脈の山あいにあるアラゴン王国が築いた城塞都市だ。11世紀末まで王国の首都として機能し、当時から「サンティアゴ巡礼」ルートの拠点のひとつだった。

 そういえばこの「サンティアゴ巡礼」はレコンキスタとも連動している。レコンキスタの勢いが増すごと、サンティアゴへの巡礼者がヨーロッパ中から集まってきた。

 また、サンティアゴ(聖ヤコブ)はキリスト教国の守護聖人で、イスラム教徒との闘いに向かう兵士たちは“サンティアゴ”と叫びながら突撃していったとか……日本でいうところの八幡信仰“南無八幡(ナムハチマン)”みたいなものだったかと思われる。

 ハカの大聖堂の入り口の柱には、巡礼者たちが触れたことでできた窪みが見られる。その窪みの深さを見ると、どれだけ多くの巡礼者が道中のよすがに、ハカの大聖堂を訪れたかがわかる。

 大聖堂に付随する美術館には、ロマネスク当時の壁画がいろいろ展示されている。

 色鮮やかに祭壇や壁面を彩るフレスコ画は圧倒的だが、さすがロマネスク、ふんわりと包み込むようにその世界に引き込んでくれる。いや、それにしても見事。

十字軍の映画のロケ地にもなった
ロマネスクの城へ

 次に向かったのは、ハカから南へ約70キロ。美しいロアーレ城だ。

 このお城はオーランド・ブルーム主演、十字軍のストーリーを描いた映画『キングダム・オブ・ヘブン』のロケ地としても使われた場所。

 緑豊かな平原を睥睨する丘に立つ城は、たしかに絵になるし、なんかこう“王国、キングダム!”って感じがする。そのままな印象ですが……。

 で、このロアーレ城は11世紀後半、対イスラム教徒のための要塞として建てられるも、あれよあれよと最前線が南下したので、転じて王立修道院に寄贈されたという場所。城の中にはサンタ・マリア教会もあり、とにかく広い。

 アラゴンの三大ロマネスク建築のひとつということで、見るべきもの多し。ちなみに後のふたつは「サン・フアン・デ・ラ・ペーニャ修道院」と「ハカの大聖堂」。

 お城は3層構造プラス塔なので、ぐるぐると回るだけでも見応えがある。

 屋上などは修復されていないので廃墟な雰囲気なのだが、それがまた旅情を誘い、石段を駆け上がってくる甲冑姿のオーランド・ブルームが目に浮かぶような……。

 妄想から離れて、次は東。やはりピレネーの麓、レコンキスタ最前線の街、アインサへ。ここもまたロマネスクの香り漂う中世の美しい街だ。

2019.04.30(火)
文・撮影=大沢さつき