演出の河原雅彦の忠告は
「これを仕事だと思わないで」
場所:都内某所
時刻:18時頃
天気:晴れ
ハチャメチャで楽しいレキシの楽曲がミュージカルに!? その名も「愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』」。
「演出の河原雅彦さんには、『これを仕事と思わないでほしい』と言われました(笑)」
スーパースマイルで語る、ヒロインの松岡茉優さん。
「『やりたくないことはひとつもやらせたくないから、なんでも言って』とおっしゃったので、『歌わなくてもいいですか?』と聞きましたら、それは却下されました(笑)」
とても丁寧な言葉を使いながら、ジョークも忘れず取材現場を和ませる。頭の回転の速さには舌を巻く。
昨年、映画『万引き家族』で上海映画祭に呼ばれた際、空港では大勢のファンの歓迎を受けたが、どうやら現地では芸人と思われていたらしい。
「拙い英語で『アクトレス! アクトレス!』と訂正してまいりました」
シリアスドラマでもコメディでも、松岡さんの演じる人物が自然に存在するのは、この高い「呼吸を読む力」によるのだろう。緊張しいで、映画やドラマの脚本は事前にすごく読み込む、真面目な努力家でもある。
「気づくと何か考えています。無になる、ということができません。体質なんでしょうか(笑)。『勝手にふるえてろ』を観た母が、普段の茉優ちゃんだったわねと言っていました」
『勝手にふるえてろ』の主人公のヨシカは、脳内の妄想会話が止まらないような女の子。松岡さんが演じることで、不器用さも輝いて見えた。
「いただいた役のことは、誰よりも愛していたいですし、一番の理解者でいたいと思います。彼女たちには幸せになってほしいので、その足がかりを私が作らなくちゃ、と毎回思っています」
役の呼び方も、キャラクターごとに違うのだそうだ。
「『万引き家族』は亜紀“ちゃん”。でも『勝手にふるえてろ』は、ヨシカちゃんでもヨシカさんでもなく、“ヨシカ”なんです。『ちはやふる』の詩暢ちゃんを呼び捨てになんかできません。この感覚はとても大事にしています」
それだけ寄り添った役も、クランクアップと同時に「成仏させる」。
「アップ当日か、遅くとも翌日には必ずヘアスタイルを変えます。仕事の関係でばっさり切れなかったら、中を梳くとか、パーマをゆるくかけるとか、少しでも変えないと、気持ちが悪いです。そうやってひとつひとつ成仏していただきます(笑)」
舞台出演は今回で4回目。最初のころは正直、苦手意識もあった。
「舞台俳優さんのようにやらなければいけないという思い込みがあり、できないことに悩んでいました。でも、私にオファーをしてくださったということは、“私”を求められているのだから、私らしく頑張ればいいのだということに気づきました」
だから、今回の初ミュージカルも気負ってはいない。
「河原さん曰く、レキシさんの曲は“デタラメ”で、今回の舞台も歴史を追いたい人にとってはちぐはぐかもしれません。でも、難しい要素は一切ありませんし、まっさらな気持ちで飛びこむと、すごくピュアな音楽と物語ではないかなと思います」
松岡茉優(まつおか まゆ)
1995年生まれ、東京都出身。2008年「おはスタ」(テレビ東京)で、本格的にデビュー。以降、多方面で活躍。主な出演作品にドラマ「あまちゃん」(13 NHK)、大河ドラマ「真田丸」(16 NHK)、「ウチの夫は仕事ができない」(17 日本テレビ)、「コウノドリ」(15、17 TBS)、映画『桐島、部活やめるってよ』(12)、『勝手にふるえてろ』(17)、『万引き家族』(18)など。主演映画『バースデー・ワンダーランド』(声の出演)が2019年4月26日(金)、『蜜蜂と遠雷』が2019年10月4日(金)に公開。
愛のレキシアター『ざ・びぎにんぐ・おぶ・らぶ』
「きらきら武士」や「狩りから稲作へ」など、レキシの曲を20曲以上使用し、様々な歴史上の人物が登場する予測不能なミュージカル。山本耕史は35歳引きこもりの役で見たことのない姿を披露する予定。
原案・演出・上演台本:たいらのまさピコ(河原雅彦)
出演:山本耕史、松岡茉優、佐藤流司、八嶋智人ほか(レキシ/池田貴史の出演はなし)
公演期間:2019年3月10日(日)~3月24日(日)
※21日夜に追加公演、大阪公演あり。
場所:TBS赤坂ACTシアター
問い合わせ先:0570-550-799(キョードー東京)
Column
C&C インタビュー
今月のカルチャー最前線。一押しの映画や舞台などに登場する俳優にお話を聞いています。
2019.03.18(月)
文=黒瀬朋子
撮影=松本昇大
スタイリング=池田未来
ヘア&メイクアップ=髙橋 彩