常に引き返しながら脚本を書く
──脚本を書くということが、年齢を重ねるごとに面白くなっているんですか。
坂元 でも、1回あたりで書く分量が増えたから、仕上げるのが遅くなった。そこは大きく後退してますね(笑)。
僕は脚本を何回も何回も直して、常に引き返しながら書くんです。現場からの注文を受けて直すのも好きだし、セリフの語尾の微調整とかも楽しくて仕方なくて、ちまちまとずっとやってられる(笑)。昔から勢いで書くタイプじゃなかったから、今もあんまり変わらないのかもしれないです。
──ときどき、坂元さんのドラマに出てくる登場人物を自分の友達のように思い出すことがあります。ドラマは誰かの人生や考え方に影響を及ぼすものでもありますが、何か思うことはありますか?
坂元 僕個人としては常に10代の人たちに観てもらいたいと思って書いていますし、公共の電波で流しているということも意識しているので、テーマとか答えを提示するようなお話にはしたくないし、できるだけ真面目に、真摯に作りたいなとは思っていますね。
――「10代に見てもらいたい」というのは、一番多感な時期だからでしょうか。
坂元 そうですね。大人は他に娯楽がいっぱいあるしね(笑)。10代は息抜きのためには観ないでしょ。楽しいものと面白いものは違っていて、面白いものを求めているのが10代のイメージ。「重いもの」「わかりにくいもの」「観たことのないもの」だってしっかり受け止めてくれるし、10代を中心として、上の世代にも広がったらいいなって。
実際、僕が脚本を書いてるドラマを観てくれてる方たちは圧倒的に若い方が多いそうですし、上の世代で見てるのは僕の友達だけなんじゃないかなって思う時もあります(笑)。
それに、「中高生に観てほしい」というのを中心にして作っていると、その子たちが今後どういう映画を観るようになるかとか、どういう大人になっていくかということに、もしかしたらそのドラマも関わるかもしれないから、責任があるというか、やっぱり背筋が伸びますよね。僕はもう自分の人生に求めることは特にないし、後はどう次の世代に繋げていくかだけですよね。
特に「カルテット」と「anone」は、僕の中であるひとりの10代の人に向かって書いたものです。
──「カルテット」と「anone」は、明確に届ける人物の顔が見えていたんですね。
坂元 うん、迷った時はその子のことを思い浮かべながら書きました。指針、旗ですよね。どこに行けばいいかわからない時、旗が立っていると、明確にそっちに行こうとすることができるんです。
でも、そういうことを考えるのはストーリーとか展開を考える時だけで、実際に書いている時は俳優さんのことだけを考えていますよ。
──ストーリーありきで脚本を書いているわけではないんですね。
坂元 自分の中では、ストーリーよりも登場人物を魅力的に描くことのほうがプライオリティが遙かに高い。
2018.10.19(金)
構成=上田智子