理想的な登場人物の人数は?
──だからこそ、どの俳優さんに出てもらうかが大事なんですね。
坂元 そうですね。もうそれしかないです。好きな俳優のセリフを書いていないと、生きていけない人間なんです。
――登場人物ありきで脚本を書くのは、どうしてなのでしょうか。
坂元 そういうふうにしか書けなくなっちゃったんです。ドラマだから当然ストーリーというものが登場人物に襲いかかってくるわけですけど、自分もその人たちといちいち一緒に生きているんですよね。
最初に大きなストーリーみたいなものもなんとなく決めるんです。でも脚本を書き始めると、1行1行その登場人物になりきってしまうので、書きながら「こんなことが起きてしまって、一体どうすればいいんだろう?」とひとつひとつ対処していくしかなくて。その人たちと一緒に生きていくしかないし、他人事じゃないので、そこで何か大変なことが起きたときに、さてどうしたのものかと悩むんですよね。
はじめに自分で作ったストーリーに襲いかかられるたびに、「何でこんな目に遭うんだ?」って困ってる(笑)。自分に嘘のないように1行1行生きていくしかないんですよね。
──登場人物が、全部自分なんですね。
坂元 そう、当事者なんです。自分の意識としては、演出家というより俳優のほうが近いと思っていて。その役に憑依して、その役になって書いているから、登場人物が入れ替わって喋るたびに、ひとりで5役、6役やっている感覚なんです。
――理想的な登場人物の人数は?
坂元 4人ですね。4人が最高です。
──セリフの読み方やお芝居について、何かリクエストをされることはありますか?
坂元 脚本は設計図ですし、どういうドラマなのか、どこを目指せばいいのかも含めて、みんなの想像力を呼び起こすものを書かないと意味がないので、僕から何かを言うことはありません。どうやって登場人物が生きていくのかは、役者さんが現場に立って、呼吸をしながら作っていくもの。撮影現場に行かない僕にはわからないことですよね。
――現場でセリフを変えられたときは、どう思いますか?
坂元 ドラマが始まる前に「変えないでね」とは言わないですけど、変わったときに意見はハッキリ言いますね。でも、大体みんなずっと一緒に仕事してる人たちだし、決定稿にする前に意見交換してるから、セリフが変わることはほとんどないです。
2018.10.19(金)
構成=上田智子