『ジャンゴ』の登場人物に感動した
──「女性の気持ちを描くのがうまい」と評されることも多いですよね。
坂元 女性のセリフが書けてるかどうかは、自分ではあんまりわからないです。僕は男女で分類しないで書いていて、男女でセリフの語尾も変えないんですよ。特別な存在ではなく、個々の人物として書けば、「女性が書けてるね」って言われるのかなあって勝手に想像しているんですけど。
男性を書く時の方がどうしても自分と重ねてしまうから、書きづらいです。「ここでこんなにテンション上がらないよなあ」とか「俺はこんなに勝手なことは言わないなあ」って不自由になってしまうところがある。でも、女性を書くときは、自由に書いてますね。
デビュー作(「GIRL-LONG-SKIRT~嫌いになってもいいですか~」)も女の子3人の話ですし、「問題のあるレストラン」もずっと書きたかった女性ばっかり出てくる話ですから、もともと女性のお話を書くのが好きなんでしょうね。でも本当に、「女性を描くのが上手い」って何で言われるのか、さっぱりわかりません。
小学生の頃からひとりで映画館に通い、映画の仕事に就きたいと思っていた坂元さん。『脚本家 坂元裕二』では、10代~20代のときに観た映画の中から「特にお気に入りの映画」を挙げてもらった。クエンティン・タランティーノ監督の話題になったとき、こんなことも話してくれた。
──坂元さんの仕事場には様々な映画のDVDがありますが、タランティーノもお好きなんですか?
坂元 たまたま買ったんだと思います。タランティーノは特別に好きってわけじゃないですけど、映画『ジャンゴ 繋がれざる者』のクリストフ・ヴァルツがやってる役(ドクター・キング・シュルツ)はほんとに好きで、ここ十何年で一番感動した登場人物なんです。
どういう人なのか、どこから来た何者なのか、バックボーンがさっぱりわからないんだけど、なんにも語らずに、ただただ素敵な行動をしていくんですよね。理由がわからないから素敵なんです。ああいう役が書けるようになったら最高だなあと思って、何回かチャレンジしていますけど、なかなか上手く書けない。誰でもないって人をドラマで描くのは難しいですね。
» Interview 02 「カルテット」キャスティングの裏側
坂元裕二(さかもと ゆうじ)
1967年大阪府出身。脚本家。主なテレビドラマ作品に、「東京ラブストーリー」「最高の離婚」「問題のあるレストラン」「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう」「カルテット」「Mother」「anone」などがある。向田邦子賞、芸術選奨新人賞、同文部科学大臣賞、橋田賞を受賞。
脚本家・坂元裕二が語る
創作の秘密
2018.10.19(金)
構成=上田智子
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