マンガやゲームからキャラクターを飛び出させ、その息遣いを感じさせてくれる。「2.5次元舞台」の人気俳優の秘密は、本の世界に没頭し、知り、感じること。
原作を知らない人も
その世界にお連れしたい
時には執事のような慇懃無礼さで忠誠を誓う、日本刀から顕現した付喪神に。また時には、ためらいもなく「ブス!」と吐き捨てる、妄想発のオレサマ高校生に。漫画やゲームで描かれたキャラクターが、舞台上で生きていることが「2.5次元」の魅力だと、このジャンルの立役者は語る。
「僕らのほうから『0.5』寄り添っていって、2次元のほうからも『0.5』こちらに寄ってきてもらう。そうやってつくる世界なんです。舞台という空間を『みんなで楽しもうよ』と提示する感じかな。原作を知らない人も『その世界にお連れしたい』という思いで舞台に立っています」
カメラマンの指示に瞬時に対応し、舞台上のようにいつどこから見てもサマになっていたことを指摘すると「ぜーんぶ“ふり”をしているだけです」と、あっさり種明かししてくれる。
「基本的に猫をかぶっているんですよ(笑)。僕は不器用だし、新しい現場に入るたびに柔軟性のなさを痛感する。だからこそ、僕は強くあろうと思うんです。人に見ていただくのだから、何かに長けていないと居てはいけない場所で、不器用だからこそ探究心や、執着心では負けていないつもりです」
【和田雅成さんが
「タイトルに言葉の力を感じる」本】
『君の膵臓をたべたい』 住野よる
高校生の「僕」が病院で拾った1冊の文庫本。そこには、いつも明るい人気者の山内桜良が、膵臓の病気に冒されていることが記されていた。秘密を共有し、心を通わせるふたりの物語。
双葉文庫 667円
『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』 七月隆文
美大生の南山高寿が、ひと目惚れをした福寿愛美。一緒にいるとたびたび涙を流す愛美は「あなたの未来がわかるって言ったら、どうする?」と、謎めいた言葉を発する。運命的なラブストーリー。
宝島社文庫 670円
『魔球』 東野圭吾
高校野球部の主将だった青年が、愛犬とともに殺される。鍵を握るのは、彼とバッテリーを組んでいたエースピッチャーの須田。彼が試合で投げた「魔球」に秘められた、暗い純情とは。
講談社文庫 660円
2018.10.16(火)
Text=Mayuko Ueda
Photographs=sai
Hair & make-up=Satoko Nishida