一気に大勢の人に伝えられる
それが映画の魅力

――テレビドラマにしばらく出ていませんが、出る予定はありますか?

「もう来年のスケジュールは映画の撮影で埋まっているので、しばらくはなさそうですね。シリーズものの長時間映画みたいなものには、興味があるんですが。僕は楽しく仕事をしたいと思っているので、自分だけでなく、スタッフの皆さんが仕事に対して意欲を持ってできる環境がいいなと思っています」

――では、ドンウォンさんにとって映画の魅力とは?

「表現に限界がないこと。いろいろなテーマや題材を、さまざまな手法で伝えることが出来る。映画界の人たちはとても純粋な人たちが多い、という話をよく仲間たちとするんです。純粋に映画への愛が強く、こうしたメッセージを投げかけたいという使命感を持ってる人が多い。舞台もそうした面が強いと思いますが、何か伝えたいことがあっても、観客の数が限られてしまう。映画は一気に大勢の方に伝えられるのが、良い点だと思います。もちろん商業性も必要だけれど、同時に純粋な芸術という面があるんじゃないかな、と。純粋な芸術、という言葉があっているかどうかは難しいですが」

――今後、一緒に組んでみたい監督がいたら教えてください。

「日本映画に出てみたいとずっと思っています。なかなか機会がないのですが、是枝裕和監督や、中島哲也監督と映画を撮れたら嬉しいですね。日本語で演技が出来るかが心配ですが。(日本語で)まだ、無理じゃないかな?」

――では、個人的な、また仕事の上での、2018年の目標を教えてください。

「個人的な目標というのは特になくて、とにかく楽しく仕事をしよう、と思っています。今はキム・ジウン監督と、『人狼(原題)』を撮っている最中です。もう撮り終わった『1987(原題)』と『ゴールデンスランバー(原題)』とあわせて、3本が来年公開の予定です。『ゴールデンスランバー(原題)』は日本原作なので、日本でも愛されたらいいな、と思います。さらに今、3、4本の映画の企画があって、それが全部実現したらいいですね」

――ちょっと忙しすぎませんか?

「たしかに、とても忙しいですね(笑)。もしかすると、来年は今までで一番忙しくなるかもしれないです。1年に4本も撮ったことがなかったんですが、来年はそうなるかも」

――楽しみだけど、大変そう。体に気をつけてくださいね。

「ありがとうございます」

――最後に日本のファンの方へメッセージをお願いします。

「『MASTER/マスター』に続いて、『人狼(原題)』や『ゴールデンスランバー(原題)』といった日本原作の映画もあるので、これからも良い映画を撮って、みなさんとお会い出来たらと思っています。日本にもまた来たいですし、これからも応援していただけると嬉しいです」

 満面の笑顔と共に去っていった、カン・ドンウォン。ぜひ、近い将来、日本映画に出てほしい。日本の監督、お願いします!

11月6日にTOHOシネマズ上野で行われた試写会に登壇。「お久しぶりですね、カン・ドンウォンです」と日本語で挨拶。日本での舞台挨拶は7年ぶり。
好きな日本食を訊かれると「おそばとお寿司が大好き。トンカツも天ぷらも。食べるのが大好きなんです。他に楽しみがあまりないので」と笑っていた。

カン・ドンウォン
1981年生まれ。韓国・釜山出身。大学在学中にモデルとしてスカウトされ、2003年にドラマ「威風堂々な彼女」でデビュー。映画『オオカミの誘惑』(04)で大ブレイク。『デュエリスト』(05)、『チョン・ウチ 時空道士』(09)、『義兄弟 SECRET REUNION』(10)、『超能力者』(10)などスター街道を邁進中の2010年11月から2年間、兵役のためスクリーンから遠ざかる。除隊後もブランクを感じさせることなく、『群盗』(14)、『華麗なるリベンジ』(16)ほかヒットを連発。2017年には日本公式ファンクラブも発足した。

『MASTER/マスター』
投資会社のチン会長(イ・ビョンホン)はそのカリスマ性と政治家への賄賂で、事業を拡大。これを巨大金融詐欺と見抜いた捜査官ジェミョン(ドンウォン)は、チンの部下である天才ハッカー(キム・ウビン)を仲間に引き入れるが、チンは東南アジアで死亡。しかしジェミョンはチンが別人になりすまし、フィリピンで新たな詐欺を企んでいることに気づく。実際にあった巨額ネットワークビジネス詐欺事件をもとにした、サスペンス・アクション。韓国では715万人を動員し大ヒットとなった。
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TOHOシネマズ 新宿他、全国上映中!
http://master-movie.jp/

石津文子 (いしづ あやこ)
a.k.a. マダムアヤコ。映画評論家。足立区出身。洋画配給会社に勤務後、ニューヨーク大学で映画製作を学ぶ。映画と旅と食を愛し、各地の映画祭を追いかける日々。執筆以外にトークショーや番組出演も。好きな監督は、クリント・イーストウッド、ジョニー・トー、ホン・サンス、ウェス・アンダーソンら。趣味は俳句。長嶋有さん主催の俳句同人「傍点」メンバー。俳号は栗人(クリント)。「もっと笑いを!」がモットー。片岡仁左衛門と新しい地図を好む。

2017.12.02(土)
文=石津文子
撮影=五十嵐 瑛仁(TRON)
スタイリスト=KIM HYUN KYOUNG
メイク=AN SUNG HEE
ヘア=LEE SEON YEONG
衣装=SISE