目指す陶芸のすべてがここにある
<旅の途中で出会った人>
陶芸家/絵付け師
山本亮平さん・ゆきさん
茶碗や皿をまるで割り散らかしたかのように、道端のそこかしこに数百年前の器の破片が顔をみせる不思議な光景。山本亮平さんの自宅兼工房がある有田町の南川原地区は、日本で初めて磁器が焼かれた土地で、工房の裏山には天神森窯という有田の中で最も古い窯跡もある。道端の陶片も、この地で磁器が作られていた証なのだろう。
「なんかすごい田舎だな、と(笑)。最初は、住む気満々ではなかったんです。でも、だんだん居心地がよくなって」。東京の美大を卒業後、有田窯業大学校で焼きものを学んだ山本さんは、絵付け師である妻のゆきさんとも、そこで知り合った。
「原料が石、灰、水だけという、磁器のシンプルさが好きなんです。この場所には、そのすべてが揃っているんですよね」。山本さんが目指すのは、磁器誕生の頃の器作り。その時代に思いを馳せると、古いものをなぞるだけでなく、今の時代にどんなことができるだろうか、と創作意欲も湧くという。
「焼きものについて詳しい方が近所に多いので、教えてもらうことも多くて。暮らしているだけで学べる環境です」。土地のルーツに導かれて器を作り、日々を送る。夫妻の醸し出す穏やかな空気感は、作品に表れている。
山本亮平(やまもと りょうへい)
1972年東京出身。多摩美術大学油画科卒業。2002年有田窯業大学校絵付けろくろ研修終了。2007年有田町にて独立築窯。
山本ゆき(やまもと ゆき)
1978年長崎県佐世保市出身。
●協力
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2017.08.10(木)
Photographs=Yumiko Shimosoyama