いつか、いつの日か
口紅を塗らなくなる日を
予感させる口紅
口紅が今、改めてブームである。といっても、“ぺったりと口紅を塗る”ブームではない。むしろ“あんまり塗らない”ブームといってもいいかもしれない。
数年前に、“5分の2発色”を謳う口紅がキッカからデビューして、それって何? と、首をかしげた人もいたはずだが、これは発色をあえて抑えた口紅、これが思いがけず大ヒットしたことで、口紅って実はあまり発色しないほうがいいんじゃないか? という、これまでの常識とは全く逆の概念が突然のように躍り出た。何しろ、口紅の世界では、発色の良い口紅ほど良いという、絶対の法則があったのだから。
でもコスメ業界自体が、実は発色しないほうがいいのかも……と気づいたとたん、「本当の意味で人をキレイにするリップメイク」が改めて始まったと言ってもいい。それ以降、薄づきの新しいタイプが続々デビューしているのだ。とても単純にグロッシーな、発色を抑えた口紅はもちろん、いわゆるティントタイプ、オイルインタイプなどもその一つな訳で……。
そんな流れの中、さらに全く新しい位置づけの口紅がデビューする。1つは、イプサの口紅新ライン。一見普通の口紅に見えるけど、 これが誰も想像し得なかった特徴を持っていた。
まず、口紅というものに私たち女が何を求めているのか? あるいは、自分は一体どんな女になりたいのか? そういう意味での深層心理を読み取ることによって、自分の使うべき色を探し出すという、全く新しい口紅カウンセリングを提唱する口紅なのだ。これが、コスメ市場で初めて本格的な個肌対応を提唱したイプサの仕事であることも、とても大きな意味を持つ。本当の意味で自分のコスメを見つけるシステム、またそれを見つけることがキレイの大前提という哲学を持っているブランドだからこそ、ここまでやってのけたのだから。
方法は、様々な写真を使っての心理テスト。これと肌の血色や色相を読み取る肌診断との組み合わせによって、自分が使うべき口紅が提案されるのだ。ある意味でとても客観的であり、気づかなかった自分のキレイを見つける発見でもある。いずれにしてもハッとするほど新しい口紅との出会いがあるはずなのだ。
2017.08.03(木)
文=齋藤 薫
撮影=釜谷洋史