JR加古川駅から南西に徒歩約10分。以前にご紹介した、イギリスのお菓子と紅茶のお店「チャッツワース」の前を通り過ぎて、駅前開発の近代的な建物が途切れた、さらに先にあるのが「S & N」。焼きたてマフィンとスコーン、ベーグルと季節のおやつの、小さなお店です。

どれから食べようか迷ってしまうくらいおいしそう!

 営むのは藤井志織さん、望未さん姉妹。姉の志織さんがマフィンとスコーン、季節の焼き菓子を、妹の望未さんがベーグルを担当しています。

左:妹の望未さん。店内は温もりにあふれたほっとする雰囲気。
右:スコーンを作る姉の志織さん。

 「父親は、代々、建具の職人をしていました。亡くなってから、自分たちも何かを作って職人として生きたいと考えるようになったんです」と志織さん。元々、趣味で作ってイベントなどに出品していたお菓子の店をやろうと、物件を探し始めます。見つけた今のお店は、元Gパン屋。「床も壁も自分たちで貼ったんですよ。DIYです」とにっこり。

手書きの看板が目印。

 照明は前の店舗のスポットを活用。厨房設備は中古品。友人の建具職人にパーテーションを格安で作ってもらったり、幼なじみのガス屋さんに助けられたり。できるだけお金をかけずに、自分たちでコツコツ4カ月かけて改装したのだそう。

「什器として焼き菓子を並べているのは、ひいひいおばあちゃんがお嫁入りの時に持ってきた長持。入口を入って左の箪笥もそうなんですよ」

 さらに、祖母が使っていたミシン台も改造して、ベーグルを並べる台に。

「コンクリート打ち放しのままでなく、ふたりならではの温かみのある空間にしたかったんです」

左:祖母が使っていたミシンの脚を使った台にベーグルを並べて。
右:こちらの古い箪笥もひいひいおばあちゃんの時代のもの。

 オープンは2014年2月。ふたりが手をかけて造った、ほっこりした雰囲気のお店には、ベーグル10種類程、焼き菓子20種類余りが並んでいます。

こだわりの卵を使います。

 姉妹は、安心、安全な国産素材にこだわっています。卵は兵庫県小野市の鶏園みやもとの「宮本さんちの平飼い地たまご」。「赤玉で大きくて、味も濃厚で力強いんです」と志織さん。

 地元・兵庫県の共進牛乳、北海道産の小麦粉、バター。きび砂糖、沖縄の雪塩。「主な材料は絶対に国産」とふたり。

 さらに「兵庫県加東市の実家でおばあちゃんが作っている野菜を使っています」。ニンジン、ホウレンソウ、カボチャ、サツマイモ……。望未さんは、季節の野菜を練り込んだベーグルを作っているのです。

2017.05.28(日)
文・撮影=そおだよおこ