近年、猫の行動学的研究が進み、今まで謎の多かったボディーランゲージやサインなどが少しずつ解明されてきました。人と猫が現代社会で共に幸せに暮らすためには、猫にも「人間の世界」を学んでもらう準備期間が必要です。

 栄養学に基づき、猫の健やかな成長をサポートするペットフードブランドのロイヤルカナンでは、この準備期間である「子猫の社会化」を重要視しています。

 犬と違ってしつけが難しいと思われがちな猫にとって、社会化をすることはどんなメリットがあるのでしょうか。今回はロイヤルカナンの獣医師・井上舞先生に、子猫の社会化の意義とトレーニング方法、そして土台となる栄養管理についてお話を伺いました。

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現代の暮らしに必要な猫の「社会化」

――猫の「社会化」は、どうして必要なのでしょうか?

井上先生 「社会化」とは、猫が人間社会で生きていくために必要な「物事への慣れ」を身につけることです。もともと猫は、自分のテリトリーを守り、見知らぬものを警戒して生きる動物です。しかし、現代の猫は、外で自由に暮らすスタイルから、家の中で人と共に暮らすスタイルへと環境がガラッと変わりました。

 外の厳しい環境では強い警戒心が必要ですが、家の中で暮らす猫にとっては、知らない音や人、来客のたびにパニックになっていては、心が休まる暇がありません。だからこそ、脳が発達段階にあり、好奇心が恐怖心を上回っている子猫の時期に、「ここは安心していい場所」「人間は味方」と理解してもらうことが大切です。

――社会化ができていないと、どのような困りごとが起きますか?

井上先生 例えば、大人になって保護された猫で「全く触れない」「姿を現さない」という子がいます。これでは体調が悪そうな時に様子を見られませんし、お互いに深い関係を築くのが難しくなります。ペットとして家で暮らす以上、飼い主には健康管理をする義務がありますから、診察やケアができる関係性を作っておくことは非常に重要です。

 また、私が一番懸念しているのは災害時です。地震などで家具が倒れたり大きな音がしたりした際、猫はパニックになって家具の隙間などに隠れてしまって容易に出てきません。

 社会化トレーニングの一環として「キャリーバッグに入ること」や「外の環境」に慣れていれば、迅速に、かつ猫に余計な恐怖を与えずに避難させることができます。社会化は、愛猫との信頼関係を育てるだけではありません。いざというときに、命を守るための準備でもあるのです。

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