英国の小さなモンサンミッシェル

 引き潮の時間になると、水のなかからあらわれる道の上を、歩いて渡ることができるセント・マイケルズ・マウント。コーンウォールの北海岸沿いの町マラジオンにある、伝説に満ちた聖地です。

モンサンミッシェルを小さくしたような見かけのセント・マイケルズ・マウント。(C)Matthew Jessop and Visit Cornwall

 小さいながらもフランスのモンサンミッシェルにそっくりなロケーションと見かけ、そして、ただ英語読みにしただけのセント・マイケルズ・マウントという名前、ふたつの地の関係とは一体? と気になるところです。

引き潮のときには、水のなかから歩いて渡れる道があらわれます。

 セント・マイケルズ・マウントという名前がいつ頃定着したのか、またその由来について調べていくと、西暦495年に大天使ミカエル(St Michael)が、この山に姿をあらわし、漁師に岩場から離れるように警告した、という言い伝えがあるほか、ミカエルが高い場所をつかさどる聖人であることから、英国やノルマンディーのほかにも、セント・マイケル(フランスではサンミッシェル)と呼ばれる山や丘は数多くあるとのこと。ふたつの島が同じ名前を冠しているのも、納得できます。

水陸両用車が運行しているので、満ち潮のときも渡ることができます。砂浜の上には水陸両用車の轍がくっきり。

 11世紀、エドワード懺悔王がコーンウォールのこの島と、イギリス海峡を挟んで向こう側、ノルマンディーにあるモンサンミシェルをその地形と名前の相似性から結びつけ、セント・マイケルズ・マウントをモンサンミッシェルに捧げた、と言われています。

 こうして、セント・マイケルズ・マウントは、15世紀の前半まで、フランスの支配下に置かれていました。島の見どころのひとつであるキャッスル内の教会は、1135年にモンサンミシェルの修道院長によって建てられたもの(その後14世紀に大改築)。

 現在も5月の終わりから9月の終わりにかけては、毎週日曜日に礼拝が行われているほか、島の住民や関係者はここで結婚式を挙げることもできます。

石畳のなかに、伝説の巨人の小さなハートが(写真内右下あたり)。

 ケルト文化が色濃く残るコーンウォール、さらに巡礼の人々が集う聖地だけに、伝説も多数ありますが、特によく知られているのが「ジャック・ザ・ジャイアントキラー」のお話。

 この島を住処とし、お腹がすいたら牛を盗んだり、人々を怖がらせたりしていたコーモランという名前の巨人に、マラジオンの若者、ジャックがたったひとり立ち向かい、落とし穴をつくって巨人を殺した、というストーリーです。

 キャッスルに向かう石畳のなかには、この巨人の小さな心臓(ハート)があり、島を訪れる人がきょろきょろと探しながら歩いています。

左:山の上に立つキャッスル。なかを見学することができます。
右:キャッスル内の教会。モンサンミッシェルに拠点を置く、ヴェネディクト会修道院によって建てられたもの。

 引き潮のときには歩いて行けますが、満ち潮のときもボートで気軽に渡ることができます。島には、ショップや一休みできるティールームもあるので、少し時間に余裕をもってのんびりと散策をするのがおすすめです。

St Michael's Mount
(セント・マイケルズ・マウント)

所在地 Marazion, Corwall TR17 0EL
http://www.stmichaelsmount.co.uk/

【取材協力】
英国政府観光庁

https://www.visitbritain.com/jp/ja

Visit Cornwall
https://www.visitcornwall.com/

VisitDevon
http://www.visitdevon.co.uk/

安田和代(KRess Europe)
日本で編集プロダクション勤務の後、1995年からロンドン在住のライター編集者。日本の雑誌やウェブサイトを中心に、編集・執筆・翻訳・コーディネートに携わる。
ロンドンでの小さなネタをつづったフェイスブック www.facebook.com/kresseuropelimited
運営する編集プロダクションのウェブサイト www.kress-europe.com