スペシャリストが語る
イングランド南西部のチーズの魅力

 チーズの国と言われて、英国を思い浮かべる人は少ないかもしれませんが、実は英国産チーズの種類は、フランス産の種類を上回ると言われています。その多くは、大量生産ではなく、チーズメーカーが昔ながらの手作業で製造しているアルチザンチーズ(職人チーズ)。秀逸な乳製品で知られるイングランド南西部はもちろん、数々の名チーズの故郷としても知られているのです。

チーズ専門店「ラ・フロマジェリー」マリルボーン店の外観。ここのほかに北ロンドンのハイバリーにも店舗があります。
27年前、フランスから持ち帰ってきたチーズを自宅の庭の物置小屋で近所の人に売り始めたところから、40代にしてこの仕事をスタートさせた、ラ・フロマジェリーのオーナー、パトリシアさん。

 「産地によってさまざまな特徴がありますが、イングランド南西部、特にサマセットからデヴォンにかけては、すばらしいチェダーチーズの産地ですね」と話すのは、ロンドンでチーズ専門店を2店舗展開しているラ・フロマジェリー(La Fromagerie)のオーナー、パトリシア・マイケルソンさんです。

 チェダーチーズといえば、英国を代表するハードチーズ。英国人にとってはもっともなじみの深いチーズです。

 「キーンズ、モンゴメリー、ウェストコムとチーズメーカーによってそれぞれスタイルは異なりますが、いずれもビールやサイダー(リンゴ酒)、ボルドーワインとも相性は抜群です」とパトリシアさん。

チーズの図書館のようなチーズルーム。すべてのチーズにテイスティングノートがついているのは、チーズ初心者でも気軽にトライして欲しいというパトリシアさんの配慮から。

 さらにコーンウォールのチーズについて質問すると「デヴォンからコーンウォールにかけては、ガルフストリーム(暖流)の影響で、冬も極寒にならず、さらに暖かい夏の季節が長い。チーズづくりにとっては最適の気候に恵まれています。豊かな牧草のなかに放牧されたローカル種の雌牛やヤギのミルクからつくられるチーズもさることながら、羊のミルクからつくられるブルーチーズ(青カビのチーズ)、ビーンリー・ブルー(Beenleigh Blue)は絶品です」とのこと。

パトリシアさんの著書。日本語翻訳版もあります。
さまざまなチーズのワークショップでは、チーズのテイスティングや日本酒とチーズをテーマにしたものもあります。

 ラ・フロマジェリーには、チーズの保存に最適な6℃に保たれたガラス張りのチーズルームがあり、常時およそ300種類の世界のチーズをストックしています。チーズのスペシャリストに気軽に相談したり、試食したりしながら、好みのチーズを選ぶことが可能。

 併設のカフェではお茶や食事を楽しめるほか、毎週金曜日の夜には5種類のチーズを食べ比べできるチーズボードをサーブしています。フレンチボード、英国&アイリッシュボード、イタリアンボードといった国別ボードのほかに、スタッフが季節にあわせて選んだチーズルームボードも。

 金曜日は混雑するので事前に予約、そしてお土産を買うときのためにクーラーバッグを持参でどうぞ。

La Fromagerie
(ラ・フロマジェリー/マリルボーン店)

所在地 2-6 Moxon Street, London W1U 4EW
電話番号 020-7935-0341
営業時間 月~金曜 8:00~19:30、土曜 9:00~19:00、日曜 10:00~18:00
http://www.lafromagerie.co.uk/

2017.05.14(日)
文・撮影=安田和代