コーンウォールとデヴォンの
家庭料理の魅力に迫る
英国にも、いたるところに各家庭で代々引き継がれてきたその地方の味、というものがあります。特に漁業と酪農に恵まれたコーンウォールとデヴォンの場合、地元産の素材の味を生かしたさまざまな家庭料理があるのです。
特にコーンウォールを代表するペストリー生地に肉や野菜などがたっぷりと詰まった、コーニッシュ・パスティは全国規模での人気料理になりました。ここ20年くらいの間に、ロンドンの多くの鉄道駅にも専門店チェーンが出店しています。
歴史的に鉱業が盛んだったコーンウォールで、コーニッシュ・パスティはスズ鉱山で働く鉱員たちの昼食用に、ペストリーのとじた部分を太く持ち手のようにして、汚れた手のままでも食べられるようにした料理です。朝、焼きたてのパイを紙で包んで、カイロのように懐に入れていくことで身体もあたたか、昼食時には適温になっている、という具合だったようです。
このコーニッシュ・パスティをはじめ、この土地の味を紹介している料理学校が、コーンウォールの南海岸側、トゥルーロにあるフィリー・ウェイ(Philleigh Way)です。
学校を主宰しているジョージ・パスコーさんの家族が5世代にわたって引き継いできた農場に、2012年にオープン。自らの農場でとれる新鮮な野菜や地元の港に揚がったシーフード、地元産の肉などを使った、コーンウォールの郷土料理、そして世界の料理まで幅広いコースを展開しています。
今回、ジョージさんの一家に伝わるスピアーおばあちゃんの「プロパー・コーニッシュ・パスティ(本物のコーニッシュ・パスティ)」を紹介してもらいましたので、ぜひ次ページからのレシピに沿って、日本のご自宅でもコーンウォールの味を試してみてください。
2017.04.23(日)
文・撮影=安田和代