コーンウォールとデヴォンの
家庭料理の魅力に迫る

 英国にも、いたるところに各家庭で代々引き継がれてきたその地方の味、というものがあります。特に漁業と酪農に恵まれたコーンウォールとデヴォンの場合、地元産の素材の味を生かしたさまざまな家庭料理があるのです。

コーニッシュ・パスティ。サクサクのペストリー生地のなかに肉や野菜が詰まっています。

 特にコーンウォールを代表するペストリー生地に肉や野菜などがたっぷりと詰まった、コーニッシュ・パスティは全国規模での人気料理になりました。ここ20年くらいの間に、ロンドンの多くの鉄道駅にも専門店チェーンが出店しています。

こちらはコーンウォールの漁村マウスホール村で年に一度12月23日だけに食されるスターゲイジー・パイ。通常は大型のイワシの頭がいくつもパイから突き出た奇妙な見かけで、魚の臓物までが入った独特のフレーバーとのことですが、料理学校フィリー・ウェイ(Philleigh Way)を主宰する、ジョージ・パスコーさんのアレンジ版は、魚の尾っぽが控えめに飾られたおいしいフィッシュパイでした。

 歴史的に鉱業が盛んだったコーンウォールで、コーニッシュ・パスティはスズ鉱山で働く鉱員たちの昼食用に、ペストリーのとじた部分を太く持ち手のようにして、汚れた手のままでも食べられるようにした料理です。朝、焼きたてのパイを紙で包んで、カイロのように懐に入れていくことで身体もあたたか、昼食時には適温になっている、という具合だったようです。

最初にジョージさんのデモンストレーションを見学した後、それぞれ自分でつくってみるスタイルです。

 このコーニッシュ・パスティをはじめ、この土地の味を紹介している料理学校が、コーンウォールの南海岸側、トゥルーロにあるフィリー・ウェイ(Philleigh Way)です。

 学校を主宰しているジョージ・パスコーさんの家族が5世代にわたって引き継いできた農場に、2012年にオープン。自らの農場でとれる新鮮な野菜や地元の港に揚がったシーフード、地元産の肉などを使った、コーンウォールの郷土料理、そして世界の料理まで幅広いコースを展開しています。

ベスト・クッカリースクール・アワード2017のファイナリストに選出されましたが、惜しくも優勝ならず。
料理教室では、それぞれの材料の傍らに、エプロンまで用意されています。

 今回、ジョージさんの一家に伝わるスピアーおばあちゃんの「プロパー・コーニッシュ・パスティ(本物のコーニッシュ・パスティ)」を紹介してもらいましたので、ぜひ次ページからのレシピに沿って、日本のご自宅でもコーンウォールの味を試してみてください。

2017.04.23(日)
文・撮影=安田和代