コーンウォールとデヴォンの
シーフードを堪能!

 英国の地図のなかで、左下に向かってつま先を伸ばしたように突き出た部分、そこがコーンウォールとデヴォンです。ロンドンとその近郊で暮らす英国人にとって、近年、このコーンウォールとデヴォンは、移住先として憧れの地となりつつあります。

気候に恵まれたコーンウォールの港では、バラエティに富んだ新鮮な魚が揚げられます。(C)Matt Jessop

 人気の理由は、なんといってもその豊かな自然と温暖な気候です。北海道よりも高い緯度にありながら、英国の気候が比較的穏やかなのは、メキシコ湾流またはガルフストリームと呼ばれる暖流の影響ですが、その恩恵を最も享受しているのが、この地方。

 文豪トールキンがこよなく愛したコーンウォールの美しい海岸線、英国のリビエラと呼ばれるデヴォンの海辺の町など、英国のほかの地方ではお目にかかれない魅力に溢れているのです。

ロンドンのレストランでも、コーンウォール産の魚を使っている店は多数。
西ロンドンにあるミシュランスター・パブ「The Harwood Arms」でも、コーンウォール産のサバやターボット(カレイの一種)を供しています。

 しかし、暖流による恩恵は気候と自然だけにあらず。英国のほかの地方の漁村では見られないほど、バラエティに富んだ魚が捕れるのもその特徴のひとつ。英国人の間では、コーンウォールといえばシーフード、シーフードといえばコーンウォール、という図式が成り立っているほどなのです。

 コーンウォールのシーフードの知名度を全国規模にグーンとアップさせたのが、地元のスターシェフ、リック・スタイン。1975年にコーンウォールの漁村パッドストウに夫人と共にレストランをオープンして以来40年間以上にわたり、レストラン12店舗、食材店、料理学校の経営、そして世界を旅する料理番組への出演など、地元コーンウォールに大きな経済効果を生んでいる人気シェフです。

コーンウォール地方のシーフードの知名度を全国区にとどろかせたシェフ、リック・スタイン。

 このリック・スタイン、コーンウォールで船釣りした新鮮なサバを船上で自己流の寿司にして、無邪気に振る舞っている姿が、当時の在英日本大使の目にとまり「(自己流ではなく)本物の和食を知って欲しい」と日本に送られ日本の食を取材、その後ロンドンの大使公邸での晩餐会の料理を担当した様子が2006年にBBCのテレビ番組になり、在英日本人社会でも話題になりました。

 この晩餐会の際に、リック・スタインが地元コーンウォールから取り寄せた新鮮な魚は、大使公邸専属の日本人シェフたちも感心したクオリティ。ここでもまた、コーンウォールのシーフードを視聴者に印象づけたのです。

2017.04.16(日)
文・撮影=安田和代