今、朝食に力を注ぐ宿が増加中。中でもフードライター・小松めぐみさん注目の食材と丁寧な仕事にこだわる6軒がこちら。
» 第2回 三ツ星の名店が監修する和朝食
» 第3回 医食同源を感じるおかゆが主役の漢方膳
» 第4回 29品もの小皿が並ぶ圧巻の短歌膳
» 第5回 松葉ジュースから爽やかに始まる和朝食
» 第6回 おかわり必至の湯布院産クレソンスープ
おいしい個性派、増えてます
今どきの人気温泉宿では、夕食がおいしいのはもはや当たり前。ゲストの心を摑むことに秀でた宿は、そろそろ朝食に力を入れ始めているようです。普段は朝食を抜く人でも、なぜか楽しみになるのが旅館の朝食というもの。起き抜けにつくりたての料理を上げ膳据え膳してもらえる朝食は、旅館ならではの贅沢な体験といえるでしょう。
例えば和食なら、ごはんとお味噌汁、玉子焼、焼き魚。ひとり旅におすすめなのは、そんなシンプルな品に料理人が本気で向き合う朝食。炊きたての土鍋ごはんを食べれば味の違いに気付かされるし、真似したくなる野菜料理に出合えば嬉しい気持ちになります。基本的な献立だからこそ、そしてひとりで朝食に向き合うからこそ、吟味された食材のよさや、最高の状態で出されるサービスの価値に敏感になれるわけです。
素敵な朝食を食べながら段々と体が目覚めていき、少なくともチェックアウトまではゆっくりとした時間が続いていく幸せは、旅先ならでは。またここに泊まりたいと思わせるのは、実は滞在のフィナーレを飾る朝食の思い出なのではないでしょうか。
2017.01.12(木)
文=小松めぐみ