万能薬ゆえに洗顔もできる
これぞ本当のスキンケア洗顔
クレンジングはとても特殊なカテゴリー。それこそ10年20年同じ石鹼を使っている人もいる一方、いつも新しい洗顔法を探している人がいる。洗顔ばかりは好み……と言われる一方、大きなうねりのような流行も存在する。覚えているだろうか、かつて「クレンジングオイル諸悪の根源」説が浮上。
実際私自身もクレンジングオイルで肌を荒らした経験があるので、あながちデマとは言えないが、その後に改めてオイルクレンジングブームが訪れたのも面白い。毛穴汚れまで溶かし出すオイルの洗浄力は、優れている分、取りすぎになるから起こったこと。そうやって試行錯誤を繰り返しながら、洗顔もゆっくり進化してきたということなのだろう。もちろん日本ではダブル洗顔がいまだに推奨されていて、尚も混沌としているからこその特殊市場。
そんな中で、ゆっくり時間をかけてしっかりと根を張ってきたブームがある。“クレンジングバームの拭き取り”である。
言うまでもなくバームとは「軟膏」とも訳せるほどこっくりとした粘性ベース。化粧品より傷の手当て等に使われてきたのは、肌に浸透しにくく、保護力が極めて高いから。欧米ではワセリン、アジアではタイガーバーム、一家に一個の万能薬は皆このバームだった。万能ゆえにクレンジングに使う方法は昔からあったよう。
それがにわかに注目を集めるようになるのが、イヴロムが「世界最強のクレンジング」として絶賛されたから。バームをゆっくりと皮膚温で緩めながらマッサージした後、添付のモスリンをお湯で固く絞り、これで丁寧に肌を拭くところまで提案したから。イヴロムはもともと有名フェイシャリスト。成る程、これはプロのオイルマッサージ&スチームタオルによるフェイシャルと全く同じ手ごたえ、同じ心地よさ、同じ満足度をもたらすのだ。つまり他のクレンジングとは格が違う。手間も逆に嬉しく感じるほどの仕上がりは、試した人から虜になった結果、ジワジワとブーム化した。
そうそう、油脂膜が有効成分だけを肌にじんわりと浸透させるバームの役割がクレンジングでも生きてきて、汚れを取り去る膜がマスクのように潤いだけを浸透させるから、1回の洗顔で何とも柔らかくもっちりした肌に仕上がるのだ。洗顔でありながらフェイシャル、スキンケア洗顔とはまさにこのこと。
2017.01.06(金)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫