六本木の秘密基地で繰り出される肉ツアー

「肉とスパイス」

 その名を聞いた瞬間、運命的なものを感じました。不肖Keiko Spice。

 これは、私が取材に行かないでどうする! と。

 鳥居坂下にある古い建物の中らしい。2016年11月15日に正式オープン。この日はまだプレオープンだったため、外の看板は元の「旬熟成はなれ」のまま。

 あれっ、ここ、来たことあるわ。会員制ワインバー「kazusa」と同じビルなのでした。階段で4階へ。ドアを開けると、kazusaとレイアウトがそっくり。

 初めて来たのになんだか懐かしい感じがして、いっきに和む。

奥の4人用個室を含め、17名まで利用可能。このこぢんまり感もよろしい。

 料理はコースになっていて、「お試しの旅 全3皿」3,800円から。そうか、今日私はここに旅をしに来たんだな。

 ほかは、「スパイスと肉とカレーの旅 全4皿」が5,900円、「肉とスパイス極みの旅 全5皿」は7,900円。どうせなら“極み”がいいよね。

壁にかかった「肉は自由に食べろ!」の言葉に深くうなずく。

 まずは喉を潤しましょう。

 スパイスサワー(650円)をいただきます。シナモン、八角、コリアンダー、カルダモン、生姜、クローブなどを調合し、シロップにしたものを割っていきます。

 ハイボールに仕立てたスパイスハイ(800円)もあり。ほどよい薬臭さ、嫌いじゃない。いや、どちらかといえば好き。

「ノンアルな方は、ソーダ割りでもいけますよ」

 なるほど。それに、風邪防止にもよさそう。乾杯! さあ、旅立ちの時。

マドラーはパクチーの根。エココンシャスでもあります(笑)。

 前菜に出てきたのは、熟成豚のハム、スパイシークランチポテト、そしてジャガイモと蓮根のポリヤル。ポリヤルとは南インドの代表的な野菜料理で、スパイスを使って炒め煮したもの。

旅は始まったばかりというのに、スパイスサワーのお代わりが止まらない。

 ハツ、レバー、白センマイなど、グリルしたモツがたっぷりのサラダ。ドレッシングにはきちっと酸味が利かせてあり、食欲が進む。

ずっとスパイス漬けにしない、強弱ある料理の出し方も好感。

 本来は真ん中のコースで出されるミートボールも「ちょっとお試しで」と、提供してくれた。

 スパイスがほどよく利いたミートソースが抜群。肉は、熟成の猪と豚のミンチ。

「和歌山の猪です。ウリ坊で捕まえてきて、1年から1年半、穀物を与えて育てているやつだから、ジビエの猪よりも食べやすいと思います」というのは、和歌山県出身のオーナー。

 和歌山でもレストランを経営しており、そこかしこに和歌山愛があふれている。

 添えられた天然酵母のパンがまたうまい。「お代わりもどうぞ」と。

ちょっとお代わりしそうになったが、このあとのことを考えてグッと我慢。

2016.12.05(月)
文・撮影=Keiko Spice